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  [ 青い空を見上げて 14 ]
2010-06-04(Fri) 15:13:16
笹崎侑津弥


「ほら、これに着替えろよ」
ジョーが体をバスタオルで拭きながら、
新たなシャツと短パンを持ってきてくれた。
脱衣所で、バスタオルに体を包んだままそれを受け取る。
突然、ジョーが隣で短パンを脱ぎ始めて、思わず構えた。
一緒にいるこの空間で、いきなり裸になるなんて、
俺のことやっぱり襲おうとしているのか、と。

「‥ど‥どうして脱いでんだよ」
「ウツミは俺に風邪を引けとでも?」

よく見ると、ジョーは俺の分だけじゃなく、
自分が着替えるシャツと短パンとかも持ってきていた。
ジョーだって濡れたんだから、そりゃあ着替えもする。
冷静になれば当然のことだった。

「‥あ、いや‥ちょっと‥びっくりしただけ」
「そうか。ウツミも早く着替え済ませろよ」
ジョーは俺に笑いかけて背を向けた。
その広い背を見ながら、俺はせっせとシャツを着る。

胸が、どきどきと脈を打っていた。
さっきみたいに痛いとかはない。
むしろ、気持ちいいっていうか心地いいっていうか、
どういう表現もできないけど、もやっとした嫌な感じはしない。

でも、これだけ近くにいて静かだと、
ジョーに胸の音が聞かれそうだ。
静けさに耐えられず、何か話しかけようと俺は考えた。

「‥こ‥公園で、どうしてキスしてきたわけ?」
自爆発言に、自分の口を自分で塞ぐ。

何やってんだよ俺。
わざわざそんなこと話題にしなくてもいいだろ。
もっと他に何かないのか。

ジョーに振る話題が見つからない。
たぶん、俺、軽くパニックに陥っている。
目がぐるぐると回りそうだ。

「俺、ウツミが好きなんだと思う」
ジョーが小さく言った。

回りそうな目がぴたりと止まった。

今まで生きてきて、初めて好きだって言われた。

けど、どこか納得いかない。

「‥好きだと思うって、ちょっと微妙なんだけど」
「そうだよな、やっぱ微妙だよな。あはは」
ったく、笑ってる場合じゃ無いっての。

ジョーに告白されて、俺はどうなのか考えてみた。
もちろん嫌いじゃない、むしろ好きに近いと言える。

でも、同性、だよな‥。

ジョーへの返事はどうしよう。
今頃になって緊張したのか、喉がからからに渇いていた。
考えても答えが見つからない。
だから、友達でいようとも返事ができない。

「返事とかほしくて告白したんじゃなくて、
 ぽろっと言っちゃっただけだから気にするなよ。
 ギクシャクするの嫌だから忘れてもいいぜ」

ジョーには読心術があるんだ。
だって、このタイミングで、こんなこと言われたら、
そう思わざるを得ない。

横に少しずれてジョーの顔を覗いてみると、
らしくない苦笑いをしている。
そんな顔をされて切なくなった。

「‥うん」
誠意ある返事を、きちんとしたい。
だから、俺なりの答えを見つけるまで、
もう少しだけ待ってもらおう。

ごめん、ジョー。

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