BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 青い空を見上げて 15(R18) ]
2010-06-05(Sat) 06:40:03
笹崎侑津弥


着替えが終わってダイニングで麦茶を飲んでいると、
「ウツミ、どこで寝たい?」
と、コップを洗っているジョーに聞かれた。
「‥別に、どこでもいい」
布団でもベッドでも寝袋でも、とにかく横になれれば。
それくらい、俺はくたくたに疲れていた。
色々あったから当然かもしれないけど。

「そう言うと思った。それなら俺の部屋に行こうぜ」
と、案内されたのはジョーの部屋だった。
本棚、ゲーム機にベッドに机、クローゼットがある。
一人にはもったいないほどの空間だった。

ベッドの隣に布団が置かれている。
俺が風呂の時に、ジョーが用意したんだろう。

「どこでもいいなら、ウツミは布団でもいいだろ?」
「‥うん」
「よし。もう寝るか。おやすみ」
「‥おやすみ」

ベッドに潜ったジョーを見て、俺も布団に入る。
ふかふかに柔らかくて、とても気持ちいい布団だった。
安物のベッドよりも寝心地がよさそうだ。

ジョーを見ると、こっちに背を向けていて、
寝ているのか起きているのか判らない。

ついさっき腕を切ろうとしたことや、放っておけと言ったことに、
ジョーは何も言わないし何も聞いてこない。
俺から話すのを、もしかしたら待っているのかもしれない。
聞いてこない優しさに、じわりと涙が溢れてきた。

「ウツミ、起きてるのか?」
静かな部屋に響いた、ジョーの小さな声。

「‥うん、起きてる」
「寝られるか?」
「‥判らない」

本当に寝られるか自信が無かった。
さっきまで色々とあったし、腕の傷がちょっと疼き続けている。
高ぶっている気持ちも簡単に冷めてくれない。

「こっち、くるか?」
くるっと回ってこっちを向いた、ジョー。
どきっとするような瞳で俺を見つめている。
何となくそれに逆らえなかった。

「‥うん」
俺は布団を出て、ジョーの隣に入った。
ベッドは温もりで満たされていて、ジョーの匂いがした。

「さっきキスされて、好きだって言われたのに、
 よくこっちにきたな」
「‥そっちが、くるかって聞いたんじゃん」
「またキスするかもよ?」

にししと笑うジョー。
いつもは大人びているのに、こういう表情だけは子供っぽくて、
こっちもつい笑顔になってしまう。

「‥いいよ」

え?

今の返事は何だ?

温かい何かが、心の奥から湧き上がる。

「‥ジョーにならキスされてもいいよ」

そう言い終えて、震えが走った。
俺はジョーのこと好きになっていた。

「それ、まさか告白した返事とか?」
騙されないぞと言わんばかりに、あははと笑うジョー。
こくりと頷いて見せると、笑顔から真顔になり、
がばっと俺に覆い被さってきた。

「本当か?」
「‥うん」
「同性を好きになって気持ち悪くないのか?」
「‥ジョーは?」
「これっぽっちも思ってない。だってしょうがないだろ。
 好きになった相手が男だったってだけだ」

ジョーが、俺の髪をそっと掻き上げる。
優しい指に、顔がむずむずと痒くなる感じがした。
その手が俺の頬に触れた。
まるで、ここに俺がいるのを確かめるように。

「ウツミ好きだよ」
「‥俺もジョーのこと好き‥んっ」
言い終わる前に、ジョーが唇を重ねてきた。

さっきのキスは、いきなりすぎて状況が把握できなかったけど、
今ならこれがキスなんだって判る。
重なった唇から、好きだって気持ちが流れてきて、
怖いくらい幸せになった。

ところで、キスっていうのは息をどうしたらいいんだ。
息を吸いながらするのか、息を吐きながらするのか。
気が付くと息を止めていた。
だけど、もう、苦しくて離れたい。

「‥ぷはっ」
俺から離れて、はあっと深呼吸をすると、
ジョーが驚いたように聞いてきた。 

「どうした?」
「‥こういうの初めてだから‥息できなくて苦しくて‥っ」

息を整えている俺を見て、ジョーは笑った。
「ウツミって、やっぱ面白いよ」

どこも面白くない、と睨む。
誰かと違って、そういう経験値積んでないし、
俺は俺で、これでも一応真剣なんだけど。

「‥じゃあ、ジョーは息どうしてんだよ」
「え?俺?そういうの気にしたことないな。
 それなら今度はちょっと意識してみるか」
と、ジョーは俺の顎を持ち上げて、またキスをしてきた。

すぐにジョーが唇に隙間を作ってくれた。
息を吸おうと口を開けると、ジョーの舌が口に入ってきた。
うねうねと蠢くジョーの舌が、俺の舌を絡め取る。

「‥ん‥んんっ」
頭の芯も、疼く体も、とろけるような感じがした。
あまりの強烈さに眩暈がしてくる。
ジョーの舌に弄ばれていて、こっちは何もできない。

「‥んむ、はあ、はあ」
苦しんでいるのが判ったのか、ようやく唇が離れてくれた。
離れて見つめ合うと、ジョーは笑顔だった。
照れているであろう顔で、遅れて俺も笑った。

それから、ジョーは顔中にキスしてきた。
くすぐったいけど、どうにか我慢していると、
突然、胸元に甘ったるい電撃が走ってきた。

「‥んあっ」
びくっと体が震えながら、おかしな声が出てきた。
どうして震えたのか、どうして声が出たのか、
さっぱり判らなかった。

「なあ、どんな感じする?」
嬉しそうに聞くジョーが、さわりと俺の胸元を撫でている。
やらしく動いている指が、くっと胸の突起に触れた。
シャツ越しに擦られて、ぶるっと腰が震える。
「‥あう‥ん‥っ」

ジョーに胸をいじられて、やらしい気分になってくる。
これが、気持ちいいって感覚なのかもしれない。

「なあなあ、ウツミ、どんな感じだよ?」
「‥そんなの判んない」
「むむ、意外にも強情だな」

初めてなのに気持ちいいなんて言えるかって。
胸だけでこんなに感じてるんだぞ。
俺がどれだけ恥ずかしい思いをしてるか、
ちょっとは察してくれよ。

そんな思いに反して、ジョーは耳元から首筋にキスしながら、
俺のシャツを捲くった。
にやり、と俺を見て笑い、ジョーが唇を胸に近づける。

何をしてくるか判っていた。
けど、判りたくなくて考えないようにした。
認めてしまったら見ていられなくなる。
目を閉じたらきっと感覚がダイレクトに脳に伝わってくる。
それだけは避けなきゃだめだと思った。

どきどきして待ち構えていると、
ジョーは、ちゅっと音を立てて、優しく突起を吸った。

「‥ふ、あっ」
体のあちこちが甘ったるく疼き、足から震えが走った。
受け止めるキャパシティが俺に足りるだろうか。
足りなくて頭がパンクしたら、きっとおかしくなる。

「‥ジョー‥ん、くっ」
無意識に、ジョーを呼んでいた。
呼ばれたジョーは嬉しそうに、胸をぺろぺろと舐めている。
味なんてするはずがないとこを舐めているのに、
ジョーの表情はとても美味そうだった。

急に、ジョーの手が下りていく。
胸から腹にいき、へそ辺りをつつっと撫でると、
短パンに手が伸びてきた。

すりっと撫でられたソコが勃っていて、
恥ずかしさがマックスに達した、その時だった。

ピリリ、ピリリ。

ジョーの携帯が、鳴り響く。
突然のことにびっくりした俺達は、びくっと震えた。

「ちっ、いいとこだったのにっ」
悔しそうに言いながらベッドを出たジョーは、
机で鳴っている携帯を手に取った。
「もしもし。うん、うん、いいよ。どうした?」

ジョーの話し声を聞きながら、シャツと短パンを直した。
心臓が、まだどきどきしている。
怖かったけどそれだけじゃないのも確かだった。

「え?緊急連絡網?ああ、そんなプリントあったっけ。
 うん、うちにいる。うん、そうだな、そうするよ。
 じゃあ今から連れていく。
 結城に電話?悪いけど頼まれてよ。サンキュ、じゃあな」

ジョーは携帯をおろすと、がしがしと頭を掻きむしりながら、
俺を見てふうっと溜め息をついた。
「井出からの連絡網だった。
 ウツミの両親が学校にきていて、教頭と結城が、
 頑張って対応してるってさ」

俺のせいでとんでもないことが起こっていた。

まさか学校を巻き込む騒動になるとは。

恐怖と混乱で、わなわなと唇が震えてくる。

「泊まるっていう連絡を親にしてないのか?」
ジョーの顔は俺を攻めていない。
だからこそ俺は素直に頷くことができた。
「‥ごめん。どうしても電話できなかった」

怒られても泊まると伝えれば良かったんだ。
そうすれば、こんなことにはならなかったのに。

ベッドにきて俺の震える肩を撫でてくれた、ジョー。
「携帯に着信は?メールもきてない?」
「‥携帯、持ってない」
「そうか。とにかく学校行こう」
ジョーは上着を俺に手渡してから、ぱぱっと自分も上着を羽織った。

上着を着ながら全身を震わせていると、
ジョーが、俺の手をぎゅっと握り締めてきた。
「大丈夫だ。役に立たないけど俺が傍にいるから」

心強い言葉に、震えが和らぐ。
それに応えるように、俺は力強く頷いた。
「‥うん」

俺は上着を着て、ジョーと一緒に学校を目指した。

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