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  [ 青い空を見上げて 17 ]
2010-06-06(Sun) 09:49:02
阿久津城


先にウツミの両親が職員室を出ていった。
それを見届けてから、教頭と結城に一礼し、
俺達も職員室を退室した。
花のない桜通りを抜けると、
ウツミは張り詰めていた糸が緩んだのか、ぐったりした。
俺はウツミにかける言葉が見つからなかった。

だからこそ、ウツミと手を繋いでみる。
手から伝わる温もりを、ウツミに感じてほしかった。
ウツミは無表情だったけど、ぎゅっと手を握り返してくれた。

それが嬉しくて、こんな時だというのに顔がにやつく。
不謹慎だけど、このままずっと手を繋いでいたいかった。

家についたら深夜0時を過ぎていて。

ウツミと一緒にベッドに腰掛ける。
げっそりとした顔でウツミは笑いながら、こう言った。
「‥ジョー、ごめんな」
「ウツミは何も悪くない。だから謝るなよ」

どんなことを言えば励ましになるだろう。

ウツミが元気になるだろう。

そんな魔法の言葉なんて、きっとどこにもない。

傍にいることしか俺にはできない。

少しでもその辛さを和らげたくて、ウツミに抱き付いた。
勢い余ってベッドに押し倒してしまった。

「ウツミが、ここに住めたらいいのに」
「‥ムリに決まってるだろ」
口にした願いに、あはは、とウツミは乾いた笑いをした。

俺達はまだ子供だ。
何をするにも決定権なんて与えられない。
だけど子供として、
納得いかないことに歯向かう権利はあるはずだ。

世の中、信頼できる大人もいる。
難題なこともやってくれる大人がいるんだということ、
俺はウツミに知ってほしい。

「ムリかもしれないけど、ムリじゃないかもしれない」
「‥どういうこと?」
「明日、起きてから教えてやるよ」

俺はウツミの頬にキスをした。
涙のしょっぱい味がしたけど、なかなか美味かった。

「‥ケチ」
「ヒーローの必殺技ってのは最後なんだよ。
 もう寝よう。おやすみ、ウツミ」

俺は掛布団を取り、きちんと横になった。
ウツミも一緒に寝転んだけど、小さく震えている。
そんなウツミの唇にキスをした。

愛しい存在は驚かず、にこりと恥ずかしそうに笑ってから、
そっと目を閉じた。

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