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  [ 青い空を見上げて 25 ]
2010-06-10(Thu) 07:45:49
笹崎侑津弥


久し振りに家に帰ると、みんながいた。
でも、ただいまを言わないで上がり、無言のまま部屋へいく。
業者があらかじめ用意してくれたダンボールが、
机のところにいくつか置かれてあった。
たぶん、姉が受け取り、ここに置いてくれたんだと思う。

ちょっとずつ片付けをしたら、自慢にならないほど荷物がなくて、
洋服と本と教材で、ダンボール6個分になった。

父親と母親は、あれから何も言ってこない。
その方が気が楽だし、悲しいとも思わなかった。

片付いた部屋にいると、姉と妹が、静かに部屋に入った。
2人共、寂しそうな顔をしている。

「侑津弥、こういう日がくると思っていたよ」
大学生の姉がそう言った。
妹は、俺のシャツを握ってきた。
「いなくなるんだね、お兄ちゃん」

2人は、俺と違って頭が良いし、親の信頼も厚い。

「‥俺がここで頑張れなかった分、2人は頑張れ」
妹と姉の肩を叩き、にこりと笑うと、
2人は目に溜めていた涙を流した。

「たまには遊びに行っていい?」
そう聞いた妹に、俺はこくりと頷いた。

「判ってても何もできなくて、ごめんね」
顔を両手で覆う、姉。
両親と俺の狭間で、姉もかなり辛かったに違いない。

「‥姉ちゃんのせいじゃないから気にしないで」
「うん‥うん‥」
ぽたぽたと涙を落としながら、姉は何度も頷く。
俺は2人を見て、泣きそうになるのを堪えていた。

約束の時間にきた引越し業者が、俺のダンボールをトラックに積む。
俺は後部座席に座り、親には何も言わず、そこから去った。

家の前で、ジョーが待っていた。
どうやら何かを持っている。
それを気にしながらトラックから降りると、ぱーんと音がした。
ジョーが手にしているクラッカーから煙がでている。

歓迎されているのか羞恥プレイなのか、なにがなんだか。

ジョーは満足そうな笑顔だった。
引越し業者は、ジョーにつられたらしく、にこにこ笑っている。
俺は、ただただ溜め息がでるばかりだった。

俺には客間が与えられた。
と言っても、ビジネスデスクにベッド、
それから空のクローゼットまで備えられている。
そこにダンボールを運んでもらった。

藍さんが日本を発つまで、ここを丁寧に掃除してくれた。
お陰で、とてもキレイになっている。

そこそこ片付けをして、ジョーと晩ごはんを食べた。
それからは、テレビを見たり、シャワーを浴びたり、
英語を教えてもらったり数学を教えたりして、
まったりと過ごした。

気付けばもう深夜で、目がしぱしぱして痛い。
ジョーがそれを察してかそろそろ寝ることにした。

「おやすみ、ウツミ」
「‥おやすみ」

俺は、ジョーと廊下で別れ部屋にむかった。

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