2014-07-08(Tue) 11:23:27
「私とここで暮らしませんか?」
1か月振りに、満さんと過ごした。 本屋やショッピングモールを散歩した。 ご飯を食べてお酒を飲んだ。 タクシーで満さんの家までいき、ベッドで交わり合った。 事を終え、裸でどろんでいた時の、突然の言葉。 「はい?」 「おや、言ったこと聞こえませんでしたか?」 「聞こえたような聞こえなかったような‥」 いや、ちゃんと聞こえていた。 だけど、もしかしたら聞いた通りではないかもしれない。 わざとらしく耳の穴に指を突っ込んでみると、 くすりと満さんが笑った。 「私とここで暮らしませんか?」 「俺とですか?」 「舞斗君以外に、ここに誰がいますか」 「あ‥そうですよね‥」 突然すぎて戸惑った。 郁央の食事や、部屋の掃除が、やっぱり心配ではあるし、 母さんと住んでいた家を、守りたいって思いもあって、 マンションを出ることなんて考えたこともなかった。 それなのに、ここで暮らしませんかと聞かれるなんて。 それって、つまりは同棲ってやつだよな。 同棲ってのは恋人がするものだろう。 嬉しいか嬉しくないかで言えば、やっぱり嬉しいんだけど、 郁央と父親と、彰彦と晋平に、どうやって説明しようか。 いや、郁央は満さんのこと知っているから大丈夫か。 それなら、父親と、彰彦と晋平は、どうしよう。 同棲で同棲は、やらしい感じがする。 同居っていう表現も、ちょっと違う気がするし、 このことをどう説明したらいいんだろう。 「ルームシェア、というやつですよ」 戸惑いを見透かしたように、満さんが答える。 「答えはすぐではなくて構いません。 少しだけ考えておいて下さい」 「はい‥」 頭を撫でられて唇が降りてくる。 そのまま、俺達は一緒に、ゆっくりと寝に入った。 そんな会話があった数日後だった。 自宅で、俺と郁央の前で、父さんがこう言った。 「こっちに戻ってきたら、 ここに静流達と住もうと思っている」 チャンスというのは突然やってくるものである。 俺は迷いもせずにすぱっと言い切った。 「俺ルームシェアしてくれる人がいるから、 そっちに住むことにするよ。 家賃はいらない、生活費だけでいいから」 言った後、隣の郁央と視線が合う。 それって満さんと住むってことだよね、 と言いたげに見つめられて、笑って頷いた。 郁央も、笑った頷いた。 それから、郁央の方もとんとん拍子に進んだらしく、 波多野家へと引っ越していった。 郁央が引っ越した3日後、俺も引っ越した。 次話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |