2014-10-27(Mon) 14:04:04
少しは気が晴れて、携帯を取って充電器に置いた。
今日、これからどうしようかな。 郁央と彰彦はバイトだし。 晋平は彼女とデートだし。 高校の時の友達は、あんまり連絡してないし。 何しようかな俺。 この際だし趣味でも作ろうか。 いや、そんな気分にもなれない。 そうだ、凛さんのお店にでも遊びに行ってみよう。 最近、バイト忙しくて逢ってなかったと思い、 ゆっくり出発の用意をして、凛さんのお店へと向かった。 以前、バイトですごく世話になった長瀬凛。 年齢は25歳の、俺にとっていいお兄さんだ。 18歳になってすぐにバイトを開始したみたいだけど、 そのバイトを辞め店を持ったのだ。 凛さんの店には、自分でデザインした洋服がある。 虹という漢字でコウと呼ぶ、そういう名前で活動している。 だから、服やグッズのモチーフも虹ばかり。 ちなみに、以前にやっていたバイトの内容は、 同性向け風俗だ。 凛さんは両親の借金を返すのと、母親の入院費と、 ショップを開きたいという夢があってそこで働いていた。 それぞれ色んなものを抱えながらも、 俺達はこうして出会えたのだ。 あのバイトに後悔はしていない。 だって、このバイトで凛さんや満さんと会えたんだから。 それなのに、さ。 そんなことを考えていたら、店に着いた。 むすっとした顔のままだったから、店に入る前に、 ちょっと顔を引き締めてみる。 ドアの傍に貼られた、モデルのポスターが、 ナイスなインテリアになっていた。 グローバルに人気のあるスーパーモデルの伊吹とスウが、 凛さんのシャツを着ているポスターだ。 しかも、ポスターには直筆サインまであった。 これを目当てに、ここにくる人も多いとか。 伊吹のことは数日前に目撃している。 なんて言うけど、単にマンションの隣が、 偶然にも伊吹の部屋ってだけ。 「いらっしゃい、舞斗君」 レジカウンターで、凛さんが笑った。 「こんにちは。ご無沙汰です」 「久し振り。何かいいのがあったら持ってってね」 「ちゃんと買いますよ」 凛さんはいつもそう言う。 面倒見がいいというか兄貴肌というか。 ちなみに、俺はシャツとかを持っていった試しがない。 当たり前だけど、ちゃんと買っている。 それにしても連休初日だというのに、客がそんなに多くない。 今だってお客さんは、女性2人のみだ。 この2人の目当ても、どうやらポスターみたいで、 たくさんの写メを撮っている。 カウンターの傍まで行ってさり気なく訊ねてみると、 あははと凛さんが笑った。 「連休は、ほとんどの人はレジャーに行っちゃうんだよ」 そうだよな、休みなんだからレジャーに行くよな。 蘇ってきた怒りを抑えながらも、なるほどと頷いてみせた。 俺なりに冷静を装いながら。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |