2014-11-06(Thu) 15:14:58
連休は、やっぱりレジャーに行っちゃうよな。
くうう、と唸りながら拳をぎゅっと握った。 それを見て凛さんが、びっくりしている。 「あれ?舞斗君もレジャーの予定とかあったの? でもまさか、ドタキャンとかじゃあないよね」 「あはは、まさか」 怪しまれないように笑ってみせた。 笑っているのに頬が、ぴくぴくと引き攣ってしまう。 凛さんは、怪しんでいる目をしていた。 「ねえ、気になることあるんだけど聞いていい?」 「いいですよ」 落ち着こうとしてペットボトルのお茶を飲む。 すると、こんなことを訊ねられた。 「あのバイト辞めたのって何でなの?」 まさかバイトネタとは思わなくて驚いてしまい、 お茶を吹きそうになって口を閉じた。 震える喉で、お茶をどうにかして飲む。 ぷはっと息を吐いて、涙目を凛さんに向けた。 「どうしたんですか、いきなり」 「ばれそうで辞めたのは知ってるけど、 たぶん、それだけじゃないよね?」 カウンターに頬杖をつきながら微笑んでいる、凛さん。 いや、微笑みなんていう生易しいものではなく、 全てをまるで知っているかのように、にやついていた。 「まあ、それだけなような、それだけじゃないような‥」 「すごくいい顔してんだよね、舞斗君。 好きな人か、付き合ってる人が今いるでしょ?」 勘が鋭い。 俺は、困ったように笑いながら頷いた。 「まあ、はい」 「やっぱり。あのバイトの客ってことはないっしょ。 うん、ないない。まさかね?」 やっぱり、勘が鋭い。 イエスとは言えないけど、ノーと言えばウソになる。 というわけで沈黙してしまった。 でも、沈黙するってことは同意しているも同然なんだよな。 すると、くくくっと凛さんが笑った。 そのまさかなんだ、とでも言いたそうな目をしながら。 「正直すぎだよ舞斗君」 「‥すみません」 「よかったじゃない。バイトの時は暗かったから、 それなりに心配だったんだよ」 凛さんは笑い、俺を励ますように肩を叩いてくれた。 バイトしていた当時は色々あったから、 凛さんから見てもやっぱり暗かったのだろう。 俺に手を差し出し、暗いところから救ってくれたのが、 お客さんだった満さんである。 その満さんは、急務の仕事で、今はここには居ないけどさ。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |