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  [ 星が刻んだ未来さえ2nd 18 ]
2015-03-06(Fri) 05:53:26
バイトの客としてよく来てくれていた。
菅生さんは最初、イヤな客だった。
酷いことをされたし、襲われもしたし、
ストーカーまがいなこともされた。

だけど、菅生さんは謝罪し、俺はそれを許した。
連絡先やメアドを交換しないで、
いつかどこかで会えたらお茶でもしましょう、
と約束していた。

「ご無沙汰してます」
「久し振り。まさか、こんなところで再会するなんてね」
「そうですね。びっくりしました。菅生さんも、
 その本のシリーズ好きなんですか?」

俺がそう言うと、菅生さんは慌てて新刊をそこに置いた。
どうやら、譲ってくれる気らしい。

「いや、舞斗君どうぞ」
「そういうつもりで聞いたんじゃないんです。菅生さんどうぞ」
「いやいや、舞斗君どうぞ」

そんなやり取りをしていたら、
店員が在庫を探してくれたのか新刊を何冊か持ってきてくれた。
俺達はそれを会計し、あははと笑った。

「菅生さん、これからお茶しませんか」
そういう約束だったから、俺は訊ねた。

だけど、腕時計をチェックした菅生さんが、残念そうな表情をした。
「悪いね。これから大学で講師をしなければならないんだ」
「講師、ですか?」
「カンツリが新薬を発表したんだけどね、
 新薬ができるまでの工程や、研究者としてどんな苦労があったのか、
 そういうのを薬学で話してほしいそうなんだ」
菅生さんとは別ジャンルの大学でよかった、と思った。

「そうですか。じゃあ、また今度にでも」
軽く頭を下げ、そこから去ろうとした時、慌てたように訊ねられた。

「あ、あの、楠社長の弟さんとは時々とか会っているかい?」
それは満さんのことだった。

「はい」
「舞斗君、おかしなことされてない?」
あなたじゃあるまいし、と心の中で突っ込む。

「されていませんよ」
「そうか。君と弟さんは付き合っているんだね」

ぎくり、と体が震えた。
昨日といい今日といい、なぜこういう話題になるのだろう。
しかし、隠すようなやましいことは何もないし、
ここはもう開き直ることにした。

「はい、そうです」
「幸せそうな顔してるよ、舞斗君」

菅生さんが微笑んだ。
どきっとしてしまうような、眩しい顔だった。

「弟さんに宜しく。じゃあ、またね」
菅生さんが笑顔のまま、ゆっくりと立ち去っていった。

その背中を見送って、俺もようやく帰ることにした。
コンビニのごはんを食べてから、部屋でマンガを読んだ。
そして、いつの間にかソファで寝てしまった。

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