2015-03-24(Tue) 09:13:49
「俺、おやつ食べてから行きたいです‥」
「おやつ?」 「コンビニで今やってる、限定の‥お菓子が‥」 そんなものあるのかよ、とノリツッコミ。 ああ、もう、エネマグラを意識しすぎちゃって、 めちゃくちゃなこと言ってるよ。 それなのに、満さんは手をぽんと叩いた。 「判りました。車に乗ってからコンビニへ先に行きます。 それを食べながらなら行けますよね?」 「あ、はい」 違うんです満さん。 俺がしたいのはコンビニ行くことじゃなくて、 エネマグラを抜くことなんです。 それなのに、どうしておやつのことを言ってしまったのか。 パニックになりすぎだ、俺。 「舞斗君の洋服の準備、してもいいですか?」 「はい、あの、お願いします‥」 満さんはバッグの中に、俺の服を詰めた。 さすが、どんな洋服が何枚いるのか、 俺なんかよりもよく判っていらっしゃる。 そして、もじもじしている俺の手を引っ張って、 満さんが歩き始めた。 「さあ、それでは行きましょう」 少し歩いただけで腰が痺れてきた。 廊下から見える玄関が、歪んで見える。 状況はかなりやばくて危険だ。 靴がうまく履けない。 おかしいと首を傾げながらも、満さんが助けてくれた。 「すみません」 「いいんですよ」 満さんは、ずっと笑顔だった。 一方、俺はあんまり笑えなかった。 エネマグラが、いちいち刺激してくる。 ちょっと歩いて動くだけで、 擦ってほしいところを擦ってくるのだ。 玄関を出てすぐの廊下の壁に、 手をついて体を預けた。 ああ、そうだ、今になって思えば、 トイレに行ってそこで抜けばよかったんだ。 今更、そんなことを思いついても遅い。 そんな俺のことを、満さんが心配そうに見つめた。 「舞斗君、どうしましたか?」 「何でも‥ありません‥」 「そんな訳ないでしょう。顔がすごく赤いですよ」 無言で、首を横に振る。 ゆっくりでも歩けば駐車場までは行けるはずだ。 車にさえ乗れば、コンビニへ行ってもらえるし、 そこでエネマグラを抜けばいいだけだ。 そのつもりだった。 俺の目の前で、満さんがおんぶするよう屈んでいた。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |