2016-06-10(Fri) 14:11:24
3日目。
帰り道は、混むことなく空いていた。 しばらく走っていると、ききっと車が止まった。 到着先は、海辺に近い道路。 ざざっという波の音が聞こえてくる。 寄り道するって俺は聞いていない。 しかも、ここ、どこなんだろう。 満さんを見ると、懐かしそうな目をしていた。 もしかして、ここは。 俺と満さんが付き合うことになった、ドライブ先のあの海。 「ここがどこだか判りました?」 「はい」 「ここにきたのは、あれ以来ですね」 「そうですね」 ただ、どうしてここにきたのか。 理由が、いまいち掴めない。 すると、満さんが俺を見つめながら、 ポケットから小さなボックスを出した。 「これ、貰って下さい」 思わず俺は、きょとんとした。 誕生日でもないし、記念日でもない。 プレゼントされる覚えはない。 もしかして、びっくり箱だったりして。 満さんはこう見えて、すごく子供っぽい。 よし、満さんの想像を超えるような、 リアクションで逆にびっくりさせてやろう。 「ありがとうございます」 箱を受け取り、ゆっくり開けていく。 それは、びっくり箱ではなかった。 指輪が、並んで置かれている。 予想外の展開に、しばし呆然となった。 「アクセサリーショップ行ったのを覚えていますか? 実はあの時から、お揃いでこれが欲しかったので、 こっそりとオーダーしていたんです」 満さんの声が、ちょっぴり照れている。 前のデートで確かにアクセサリーショップへ行った。 満さんに勧められてサイズを計ってもらった。 まさか、こうすることが目的だったなんて。 プラチナ製のユニセックス的なデザイン。 ずっとつけていても飽きないような、 とてもシンプルなリングに、 リアクションを取ることができなかった。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |