2016-10-21(Fri) 14:51:29
「私がデザインを決めてしまって、
きっと怒ってますよね」 低い声で、満さんが沈んだように言った。 そんなことで怒るはずがない。 怒るどころか嬉しくてたまらない。 体が熱くなるのを俺は感じた。 俺は、首を横に振る。 「これ、はめてもいいですか?」 静かに頷くと、左手の中指に、 満さんがプラチナのリングが嵌めてくれた。 サイズは、ぴったりだった。 リングに雫が落ちた。 俺の涙だ。 「舞斗君?どうしましたか?」 再び、首を横に振る。 喉が詰まって声が出てこない。 「やっぱり怒ってますか?」 首を横に振る。 「どこか痛いんですか?」 首を横に振る。 その間にも、涙がなぜか止まらない。 想像以上に、この人に大切に思われている。 それが実感できて、声にならないほど嬉しかった。 「すみません‥俺すごく嬉しくて‥っ」 20歳にもなって指輪くらいで、 こんなに泣くなんて情けないと思った。 情けないって判ってるのに止まらない。 俺を見て、満さんはほっとしたように笑った。 「舞斗君、私にもこれ嵌めてくれませんか?」 「はい」 震える手で、満さんにリングを嵌める。 愛を誓うように唇を重ね、ようやく涙が止まった。 「急にこんなに泣いてすみません」 あははと照れ笑いをしながら、手の甲でごしごしと目を擦る。 「それくらい喜んでもらえて良かったです。 怒られてグーパンチでもされたらって考えていました」 「満さんにとっての俺はそんなキャラですか?」 ここでまた2人で笑った。 それから、満さんはセダンを走らせた。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |