2017-05-19(Fri) 13:32:53
いつもの監督とオーナーのコンビと、
βチームのドライバーが、揃って歩いてきた。 まるで、俺のことを探していたかのように。 「ここにいたか、前澤」 「あ、はい」 「βチームのドライバーを、きちんと紹介したくて、 お前のことを探していたんだぞ」 監督が、俺と新ドライバーを向き合わせる。 ハーフ顔をしたβチームのドライバーが笑って、 俺に握手を求めた。 「ロバート・ウェイクロス・戸高です。 父はアメリカ人、母は日本人の、ハーフです。 名前が長いのでロイと呼んで下さい」 「あ、はい。前澤聖です。よろしくお願いします」 求められた握手に応じると、 ロイは光さん、牧田、それぞれに挨拶と握手をした。 その後、なぜか、俺にくっついて立ってきて、 するっと腰を掴んできた。 ざわりと寒気がして、慌てて離れる。 にこりと笑うロイがいた。 それを見ても笑えずにいた。 隣に、いつの間にか光さんがいる。 するりと俺とロイの間にやってきた。 まるで、ガードしてくれるかのように。 顔はひっそりと怒っていた。 「前澤、お前はチーフ歴がある。 αチームのチーフをやりながらになるが、 βチームのチーフを育ててやってくれ」 オーナーと会話していた監督が、 思い出したかのようにこっちを見て言った。 「あ、はい」 「それじゃあ行こうか、ロイ」 「はい、監督」 オーナーと監督について、ロイが歩き出すと、 振り返ってこちらに手を振った。 呆然としすぎて反応できずにいると、 牧田が、小さくこう呟いたのが聞こえてきた。 「これは面白くなりそうだ」 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |