2017-11-10(Fri) 14:02:26
午後は本部で、ミーティングがある。
その前にロイを誘って、ランチを取っていた。 ロイができるハンドルテクニックや、 逆に苦手な技を、ロイから聞く為だった。 実際に得た情報も、もちろん大切だけど、 本人自身がどこが得意でどこが苦手なのか、 どうカバーしているのかを聞かないといけない。 そうしないとこちらで何をフォローすればいいか、 車をどう仕上げていいか判らない。 2人でデザートのケーキまで済ませてから、 本部までゆっくり散歩する。 ロイはやけに俺にくっついて歩く。 これがフレンドリーなのか、単にロイ式なのか。 甘い香水の香りが、俺を鼻を誘う。 このフレグランスはレディースかもしれない。 光さんとはまた違ったいい香りがした。 本部のエレベーターフロアで、 エレベーターを待って立っていると、 いきなり目が痒くなった。 どうやらまつ毛が入ってしまったらしい。 「あ、あたた‥」 「どうしたの、セイ?」 「目が痛い‥まつ毛が入った‥」 目を掻いたら涙が零れた。 侵入してきたものを排除しようと、 どんどん涙が溢れ出てくる。 くいっ、と顎の下から力が加わって、 顔が上を向く。 ロイの手が俺の顎を支えていた。 目がまだ痛いのと、明かりの眩しさもあって、 ぎゅっと俺は目を閉じる。 「セイ、擦ったら痛くなるよ。 僕がとってあげるから動かないで」 ロイが俺の下瞼を引いて、 ハンカチを当ててきた。 真剣なロイの表情が、よく見える。 「まつ毛あった。あとちょっとで取れるからね」 「ありがとう、ロイ」 「よし、まつ毛が取れた。もう大丈夫だよ」 ロイと一緒に安堵していると、 ぽんっと音がしてエレベーターが開いた。 そこには監督とオーナーがいた。 2人の背後にいた光さんが固まっていた。 そりゃそうだろう。 だって、今の俺は、ロイに顎を上げられて、 泣きながらロイと喜んでいるのだから。 これはまるで、初めてキスされて喜んでいる、 恋人同士のようだった。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |