2018-06-14(Thu) 14:06:02
ひーひー言いながら光さんが笑っている。
俺はバカにされているような気がした。 「そんなに笑わないで下さい」 「だって少し前にさ、怒ったって変わりませんって、 きりっとしながら言ったじゃんか」 「そうですよ。確かにそう言いましたよ。 でもやっぱり悔しいじゃないですか。 牧田に迫られてるように見えるって言いますし、 ロイにまつ毛をとってもらったの見られましたけど、 光さんといればあんなこと起きません」 一気に言って一気に飲んだ。 空になったグラスの中で、からんと氷が落ちる。 一緒にいるのが当然で、いない隣が寂しい。 光さんがいれば牧田に迫られたりしない。 光さんがいればまつ毛だってを取ってもらえる。 全部、チーム分けが悪いんだ。 「ごめん、ちょっと安心したよ」 光さんはまだ笑っていた。 バカにするような笑いではなくなっていた。 「聖もそう思っていたんだな」 「そりゃあ当たり前ですよ」 「俺もさ、チーム分けに不服がない訳じゃない。 でも、やっぱり寂しいって思ってた」 肩を竦める姿に、ぎゅっと胸が締め付けられた。 光さんは自分の思いを、なかなか口にしない所がある。 だから、こういうのを聞けるのが嬉しい。 嬉しくて光さんを、ぎゅっと抱き締めたくなった。 だけど、明日からもうレース場入りだ。 集合時間も、とても早いし、 光さんのマシンはこれまで通りだからいいけど、 ロイのマシンは、ベースはある程度揃っているが、 本格的な調整が必要で、きっと体力や集中力がいる。 それに、光さんに誘われたのは飲むことだけ。 お互い忙しくなるんだからこの後は何もないだろう。 そういう期待はしちゃいけない。 昨夜、一緒にホテルで宿泊したけれども、 ワインを飲んで寝るだけだった。 口でも手でもせず、セックスもしなかったけど、 光さんと共にいるだけで、いい気分になれる。 だから、今日はこのまま解散したいから、 抱き締めたいけど抱き締めるのをやめておこう。 そんなことを考えていると、 さっきまで味わって飲んでいたのに、 光さんも一気にグラスを空けた。 そして、じっと俺のことを見つめる。 「なあ、聖、ホテル行かないか?」 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |