2019-02-04(Mon) 21:17:05
レース場のほんの僅かな、アップダウン。
コーナーの幅と広さ、奥行きと視界。 サーキットの仕掛けを見落とさないよう、 ロイと味わうように歩いた。 ロイはメモを手にしていた。 サーキット全体図が記入されている。 コーナーの角度やストレートの距離が、 そこへ更に書かれていた。 マシンに貼るのだろうか。 貼ってはダメという決まりはない。 でもメモを見る暇はないだろう。 「調子はどうだい、セイ?」 「あ、うん。マシンの仕上がりは好調だよ。 みんなとても頑張ってくれている。 メカニックとしてはやれるだけやる。 あとはロイ次第ってところかな」 「あはは。違うよ。 マシンじゃなくてセイのことだよ」 俺は思わず真っ赤になった。 メカニックバカだと思われたに違いない。 「あ、ごめん」 「一途なそういうところ可愛いよ」 ロイにウインクされてしまった。 ついでに立てた親指を見せられて、 俺はつい苦笑いを浮かべた。 気を取り直し、俺はロイに答えた。 「良くもなく悪くもない。 俺はマイペースでいつも通りだよ」 レースは2年目になるから、 1年目と違った緊張感は感じるけど、 それでも至っていつも通りだ。 まだ始まったばかりだし焦りもない。 「あ、ロイの調子はどう?」 聞かれてばかりは悔しくて、 ついそう聞き返した。 「もちろんいいに決まってるよ。 ヒカルを2位にしたヒーローが、 メカニックとして傍についてくれている。 こんなに心強いことはないさ」 「あ‥ありがとう‥」 マンガの主人公のような台詞に、 照れるしかない俺であった。 次話へ 前話へ |