2019-04-27(Sat) 13:14:34
レースが終わった。
順位は最下位。 光さんは3位だった。 あちらは新マシンの割には、 好スタートな方だろう。 最下位の理由は多数ある。 それら1つ1つを洗い出していき、 クリーンにしていくしかない。 レーサーも、メカニックもだ。 βチームのみんなはがっかりしている。 ピットの中のムードは沈んでいた。 だけど、俺はこれでいいと思っていた。 だからこそ、励ましの声はかけない。 悔しいという思いがあるのは、 まだみんな諦めていない証なのだ。 始まったばかりのチームは諦めない。 諦めていないなら上がっていける。 今日はピットの片付けだけを指示し、 すぐに解散させた。 牧田は、無言で俺に会釈し、 とぼとぼと肩を落として歩き出した。 疲れただろうから休むといい。 αチームの盛り上がりが耳に入る。 それをBGMにしながら、 βチームの情報収集をしていた。 ピット作業はどうだったか。 レーサーの走りはどうだったか。 俺はきちんと指示を出せていたか。 ピット内にあるデスクに座り、 パソコンに入力していると、 デスク上にコーヒーが置かれた。 光さんが立っていた。 ポイントを取った光さんは、 とても穏やかに笑っている。 だけど、これは余裕の笑顔ではない。 努力、才能、運、これらが合わさって、 光さんはポイントを取ったのだ。 それが分かっているから、笑みを返す。 「お疲れ。お前も休め」 「あ、はい。ありがとうございます」 温かいブラックコーヒーを啜った。 コーヒーの苦みが頭をクリアにしていく。 俺の頭に、光さんの手が乗った。 光さんの手に、温もりと優しさを感じる。 ほんの少し涙腺が緩んでしまった。 次話へ 前話へ 光「な?俺は優しいだろ?変な虫じゃないだろ?」 聖(こういうの根に持つんだよな‥) ランキング参加中 |