2019-06-11(Tue) 15:50:24
「ほらよ」
光さんからαチームのデータ2つを貰った。 カーブでの走り方、スピードの出し方、 ブレーキの踏み方、ハンドルの切り方、 それらがデータ化されている。 一緒にロイのデータと比較していく。 直す点、今のままでいい点、 それらを洗い出していき次に繋げる。 もう1つはピット作業のデータだった。 ピットにマシンが入ってきてから、 みんなの動きがどうだったか記されている。 1つ1つをもってしても、 βチームはαチームより劣っているのだ。 これはもう練習あるのみだろう。 「三木谷が、聖にこれを渡したいって、 頑張って作成してた」 光さんが笑顔で言った。 「まあ、そんなに落ち込むなよ。 新チームなんだし何もかもこれからだ」 「そうですね」 「データの受け渡しができるのは、 同じチームとして得だよな」 「そうですね」 急に、くしゃりと髪の毛が掻き回された。 何がなんだか判らなくて、きょとんとした。 目の前に、ちょっと怒っている光さんがいる。 「俺、これでも励ましてんだぞ?」 そう言うと、みるみる頬が赤く染まった。 怒っていない、照れていたのだ。 光さんの励ましなんて、レアものである。 ぷっと思わず吹き出した。 「すみません。ありがとうございます」 すると、光さんが少しだけ周りを見てから、 俺の顎を上げ、ちゅっと軽く唇を重ねてきた。 それを挨拶にして、光さんは隣に戻っていく。 俺は、全身の血液が沸騰した。 かーっと体が熱くなった。 カラカラに喉が渇いてしまい、 温くなったコーヒーを流す。 そして、誰もいないピットで呟いた。 「ありがとうございます。頑張ります」 次話へ 前話へ ランキング参加中 |