2019-08-22(Thu) 17:12:02
レースが終わった。
なんと、ロイは4位を獲得した。 そのロイは盛大に拍手をしながら、 表彰台の光さんを笑顔で称えていた。 光さんは安定の1位を獲ったのだ。 俺ももちろん拍手を送っていた。 光さんは大いに笑っていた。 俺はちゃんと笑顔を返せただろうか。 1位を獲った笑顔の光さんに、 ロイと約束したので食事をします、 と言わなければならないのが辛い。 そう考えただけで疲れる。 やましい事は何もない。 ドライバーとメカニックという、 それだけの関係なのだが、 本当にとてつもなく嫉妬されるだろう。 過去の交際歴を言わされた時だって、 しばらくの間妬んでいたっけ。 言えっていうから言っただけなのに。 ずっしりと気が重い。 どのタイミングで光さんに言おうか。 表彰式、インタビューが終わってから、 光さんとロイがピットに戻る。 βチームのメカニック達は喜んでいた。 涙さえ浮かべている者もいた。 それくらい練習がきつかったが、 その成果がやっとここで発揮したのだ。 そりゃあ泣くほど嬉しいだろう。 嬉しい気持ちを忘れずに、 これからも頑張ってほしい。 ピットでみんなで喜んでいる中で、 光さんが傍にやってきた。 「今度、ロイとご飯に行くんだって?」 ぎくっと体が震えたが、 光さんから目を逸らせなかった。 くすっと光さんが笑った。 「監督から聞いたんだ。 まあそれも仕事だし仕方ないだろう」 「そ、そうですね。すみません」 「監督に、聖のこと許してやれって言われた。 妬きすぎると聖もしんどくなるぞってな」 俺は、ぎくっと再び体を震わせた。 監督は俺達の関係を、知らないに決まっている。 それなのに、光さんにそう言ったとなると、 もしかしたら勘付いているのだろうか。 俺の考えを読み、光さんが肩を竦めてみせた。 「監督がどうしてそんな発言をしたのか、 俺にもさっぱり分からないけど。 まあ、監督は、昔からそういうの鋭いしな」 監督と付き合いの長い光さんが、 俺に言うのなら受け入れるしかない。 ただ、光さんといるという事を、 これからも気を付けなければと肝に銘じた。 前話へ ランキング参加中 |