BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 風のように遥かに 38(完) ]
2010-08-29(Sun) 07:30:10
さっきのは、どうやら通り雨だったみたいで、
すっかり空は晴れ上がった。
雨が降ったせいか少し涼しくもなり、
そんな中、俺達は、飛鳥さんの墓地へむかう。
飛鳥さんが眠っている場所は、2つ先の駅の、
寺の奥にある小高い丘の上にあった。

漆黒の墓石に、キレイな花が先に生けられてある。
飛鳥さんの友達が、ここへきたんだろう。

先輩は無言で、買ってきた仏花を花立に立てると、
手にしたライターで線香に火をつけた。
香炉に静かに置いた先輩が、そっと手を合わせる。
俺も隣で、同じように手を合わせた。

ゆっくり手を下げると、墓石を見ながら先輩が言った。
「あのね、飛鳥にとびきりの報告があるんだ。
 天清っていう恋人ができたんだよ」

先輩は、線香の煙を見上げ、
雲を辿りながら飛鳥さんへ話し続ける。

「飛鳥のことは大好きだよ。それはずっと変わらない。
 だから、これからのために僕達を見守ってほしいんだ」
そう言うと、まるで飛鳥さんの返答のように、
さわさわと草の揺れる音が聞こえてきた。

瞬間、轟音と共にいきなり突風が襲ってきた。
小さいつむじ風のような、強い風だ。
草や花びらが舞い上がって、俺と先輩を襲う。

「うわ、目にごみが入っちゃった」
「時継さん大丈夫?」

庇うように先輩を全身で覆っていると、
視界の片隅で、俺は見た。

傍に立ち、微笑んでいる飛鳥さんを。

幽霊か、幻か、白昼夢か、俺には判らない。

それよりも何か言っている。
声が聞こえなくて口を読んでみると、
ありがとう、と言っているような気がした。

ゆっくり瞬きすると飛鳥さんは消えてしまい、
風がふわりと浮いてやむ。
俺は、しばらく呆然としていた。

すると、顔を上げた先輩が俺を笑った。
「頭がすごい草だらけ」
頭に乗っている草を払ってくれる、ミナミ先輩。

「時継さん、さっき何か見えなかった?」
「ううん、全然」

飛鳥さんの墓石が、きらりと光ったように見える。
なんてこった、そういうことか。
怖さよりもただ驚くばかりの俺は、
どうせなら先輩に姿見せてあげてよ、と思った。

あなたが大切にしてきた存在は、俺がきちんと守ります、
とひっそり心の中で語りかけた。
一応、こんなんで宣戦布告になったかな。

「どうしたの?何かやばいもの見ちゃったとか?」
先輩が、俺をからかうように笑っている。

「見たかもしれない」
「え?ウソ?」
「見てないかもしれない」
「あはは、もう、びっくりした」

マジメな顔でそんなこと言わないでよ、
と俺の肩を叩く、先輩。
突然、その手が遥か先を指した。

「天清、ほら虹が見えるよ」
「ん、キレイだね」

雨が上がれば虹が架かる。

それが当たり前のように。

いいことも悪いことも忘れることは罪じゃない、
ということを、時継さんと分かち合って生きよう。

あなたとなら、それができるから。

「さてと、これからハンバーガー9個食べにいこうか」
「あ、ちゃんと覚えてたんだ」
「もちろん。約束、ちゃんと果たさないとね」
先輩が、そっと手を繋いできた。

「好きだよ、時継さん」
「うん、僕も好き」

俺達は、遥か先をゆく風を見ながら、
ゆっくりと並んで歩いていった。

前話へ

風のように遥かに、これでおしまいとなります。
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。
連載中、たくさんの拍手を頂戴しまして、
それと頂いたコメントを糧に、ここまで頑張れました(ノД`)
いつもいつもありがとうございましたm(_ _)m

青い空のキャラと違い、こちらは素直な2人なので、
今後はあまりケンカもせず仲良くしていくことでしょう。
飛鳥は‥本当にごめんなさいと平伏ものですが(涙)
彼も彼で、生まれ変わって幸せになって欲しいです。

次回はリーマンものの予定です。が。
その前にちょっとのんびりしようかと思います。
と言ってもリンク切れのチェックや(まだやってるのか)
番外だ小ネタだのと妄想は尽きませんが(笑)

マキとミナミ、今後またどこかに顔出しますので、
見つけてやって下さると嬉しいです。
それでは、本当にありがとうございました!
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風のように遥かに 37HOME魚心あれば水心(青い空2nd番外編) 目次

COMMENT

  +
拍手を下さったchico様

コメントありがとうございますヽ(*´∀`)ノ
こちらこそ長いお話にお付き合い頂きまして、
本当にありがとうございましたm(_ _)m
ちょっぴり悲しいお話となってしまいましたが、
ミナミとマキが幸せになってくれたらいいな、
と思いながら書きました。
マキは熱い男なので、ミナミを真っ直ぐに
愛してやまないと思います(*´ー`*)
ケンカや波乱というものとは無縁でいてほしい
カップルでございます♪

ジョーとウツミも相変わらずマイペースです(笑)
次回のリーマンネタを書き溜めつつ、
青い空の番外で小ネタをいくつか消化していきたいと
思っておりますのでお付き合い頂けたら嬉しいです(*'-'*)

温かい応援のメッセージと感想を頂いたお陰で、
番外もリーマンネタも頑張れます。
またフラリとブログへお立ち寄りください。
ありがとうございました(≧∀≦)


拍手を下さったR様

いつもコメントありがとうございます!
風遥にお付き合い頂き、ありがとうございました(^▽^)
楽しく読んで頂いたようで、こちらも嬉しいです。

タツとリュウについてですが、
実はどこかで書きたいなと考えております(笑)
タツのマジメさと、リュウのユルさで、
漫才のような掛け合いでお話を書きたいなあ、
と妄想は膨らむばかりです(*´Д`)
書きたいお話だらけで時間がないのが難点ですが‥(激痛)
それでもいつか、書けたらいいなと思います♪

リーマンネタ初めてなので、
どきどきしながらネタを書き溜めております。
ずっと学生ネタだったので、どうなることやら‥(^^;)
自分で自分が心配でたまりません(苦笑)
なので、そんな不安を解消するついでに、
番外やら小ネタやらをアップする予定なので、
リーマン物の前に少しだけ
そちらにお付き合い頂けると嬉しいです(*'▽'*)/
温かいコメントありがとうございました!
b y 水色 | 2010.08.30(10:30) | URL | [EDIT] |

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