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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ その雪景色窓辺より 1 ]
2010-09-08(Wed) 04:45:38
2月の真冬。
寒いのはあまり好きじゃないけど、
スノボの時だけは寒いのが気にならない。
それくらい、スノボにはまっている。
普通の大学を卒業し、普通の警備会社に就職し、
気付けばもう28歳。
夏は体を鍛え、冬になればスノボに燃え、
至ってごく普通の人生を歩んできた。

男だけしか好きになれない、という性癖を除外すれば。

それに対して、中学時代は戸惑い、
高校時代は失恋し、大学時代は隠蔽し、
社会に進出してようやく自由な恋愛ができるようになった。

しかし、恋愛なんてそう上手くはいかない。
付き合いは長く続かず、そのうち恋愛が面倒になり、
結局、ゲイバーで気の合いそうな男を拾い、
一晩だけの恋人、というパターンを繰り返してきた。

そんな時にスノボを知り、ストレス解消に友人とやりだし、
いつの間にか俺は、スノボにどっぷりはまった。

スノボは非日常な雪景色がいい。
頂上からそんなパノラマを一望すれば、
悩みごとなんかどこかへすっ飛ぶ。
それと、ボードから繰り出される風を切るスピードも、
たまらなく気持ちがいい。

あわよくばここでいい出会いがあったらいいんだけどな、
とは思いつつ、そんな簡単にいけば苦労しない。

俺はスノボする時は、馴染みのペンションを利用している。
老夫婦と、不定期でくるアルバイトのみで経営している、
いかにも隠れ家っぽいとこだ。
スノボの時は遠出を兼ねてるから、ここに必ず泊まる。

ここは人の温かみと、あと食事と風呂がいい。
廊下が軋むほど建物は古いけど、それら2項目だけでも、
充分なほど相殺できる。

今年で利用して7年目、今シーズン3回目の訪問。

念入りフル装備の、スタッドレスとゴムチェーンで、
新雪の積もる坂道を、車でぐんぐん登っていく。
ここは、ペンションへの近道にもなっていて、
地元の人くらいしか通らないような、狭い道だ。

オーディオからの曲を口ずさみながら車を走らせていると、
乗用車一台、溝にタイヤが入ったのか停まっていた。

ナンバーを見ると、俺が乗るこの車と同じ、地域名。
わナンバーではないから、レンタカーでもなさそうだ。

ノーマルタイヤでハンドルを取られたのかもしれない。
雪道でスタッドレスやチェーン装備なしなんて、
全裸で冨士登山と同様に、自殺行為だ。
なぜかナンバーが同じ俺が恥ずかしくなった。

ご愁傷様、と思いながら通り過ぎようとしたら、
困っている男性の表情が見えた。

格好よくも美形でもなく、ごく普通の顔立ちだけど、
俺にはタイプの顔だった。
まさしく、ストライクゾーンってやつだ。

俺は慌てて路肩に車を停めると、
「どうされました?」
と、雪を踏み締めながら車へ駆け寄っていった。

俺の存在を見た男性が、静かに運転席を出る。
メガネをしたその顔はやっぱりタイプの顔だった。

次話へ

新しいお話を始めました。リーマン物です。
しっとり、まったり、でもちょっとハラハラ(笑)
そんな内容になるよう頑張ります♪
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