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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 傷痕は誰が為の 12(完) ]
2010-11-08(Mon) 05:50:04
やがて仲村君から、校内へと侵入した理由が、
ゆっくりと打ち明けられた。
好きな人のクラスに入って、その人の席に座って、
その人がいつも見ている全てを見たかった、という。
そんなことをしても何が変わるわけでもない。
それでも、心のしんどさがなくなると思ったらしい。
一頻り満足し、あとに残ったのは、
こんなことをした心苦しさと罪悪感だったみたいだ。

僕達はそれに共感した。
だけどもう学校に侵入してはいけない、と論し、
二度としないと約束してくれた仲村君。

そして、これだけは信じてほしいと言い、
ガラスは割ったのではなく割れていたと訴えた。
昨日昼、会議室で遊んでいた生徒が割ってしまって、
セロハンでコピー用紙がついていただけ、という。

警察にそれを証言するも信頼されず、
ウソを吐くなと刑事に怒鳴られたと俯いた。
後日、警察にまた関わる機会があれば、
それを必ず伝えると、僕達は仲村君と約束する。

僕達の巡回は、あくまで校内のみ対象になっている。
もしも外観の巡回もあれば、
ガラスが割れているのを見つけたに違いない。
ただ、そこまですると時間やコストがかかるから、
センサーでの警備システムが存在するんだけどね。

身元引受人というのが松田教頭だったのは、
どうやら母方の親戚だかららしい。
仲村君の母親は他界し、父親は外国の女性と再婚し、
間に授かった娘と共に、遠いところで暮らしている。
そういうことで大学生の兄と2人暮らしとのこと。

それから、僕達は連絡先を交換し、
ヒロは仲村君にこう助言した。
「しんどくなったら、俺達にすぐ連絡しろよ?」
「ありがとう、ヒロさんにカズさん」

あんたらという名称から昇格してもらえた。
仲村君の素直で純粋な態度が、僕とヒロには嬉しかった。

塾に行くからと仲村君は立ち上がって、
ファミレスを笑いながら去っていった。
僕が仲村君の場所に移り、ヒロと向かい合う。

氷の溶けた水を飲んで、ヒロに夜の出来事を問うと、
警察の見解が正しいと言った。

ただ、1つだけ違うのは、
仲村君がヒロにしたことは意図的ではない、ということ。
駐車場で蹲っている仲村君に声をかけたら、
ヒロを不審者だと勘違いした仲村君が、自らの身を守るため、
下に落ちていたガラスを振り回したという。
仲村君なりの正当防衛、というやつだ。

これには、ヒロ自身も反省していた。
もうちょい優しく接していればな、とぼやくほどに。
その状況だったらどうしようもないし仕方ないよ、
とフォローすると、ヒロは救われたかのように笑った。

「仲村、ちょっとは楽になれたかな」
「大丈夫だよ仲村君なら」

僕達だからこそ理解してあげられる苦悩。

それを乗り越えるのは己の力のみ。

だけど手助けに、手くらいは差し伸べてもいい。
ヒロはそれを買って出たわけだ。
昨夜は、傷のせいかちょっとだけ怯えていたけどね。

「カズ、何にやにや笑ってんだ?」
「ヒロを好きになってよかったって思ってたんだよ」
「‥あっそ」
ヒロは満更でもなさそうな表情で、鼻を掻く。

「さてと。ぼちぼち仕事いくか」
「そうだね」
レジで清算してそのまま出勤した。

出勤後、黄島さんから報告があった。
警察から連絡があり、今回のことは不起訴になるという。
僕達3人は、改めて笑った。

そして僕とヒロは、今日もパトロールするべく出発する。

前話へ

傷痕は誰が為の、これにておしまいになります。
番外と言いつつも長くなりましたが(汗)
ここまでお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m

タイトルの傷痕ですが、色んな人が色んな傷を、
心にも体にも、持っていることだと思います。
そしてそれらを誰かと共有して癒されることも。
そういう意味合いでつけました(´▽`*)
郁央の苦しい恋心、ヒロとカズで癒されることを願いつつ。

個人的には久々に波多野の名前を出せて嬉しかったです。
(実は波多野を初登場させた時点で、既に心の中には
 郁央もいたのですが登場のきっかけがありませんでした)
あと、本編での伏線回収も、大方できたかなと思っています。
いつか郁央と波多野のお話も書きたいです♪

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いつもいつも本当にありがとうございます。
やる気の源になります。これからも頑張ります。
そういうわけで、次回作もご贔屓のほど、
宜しくお願いします(´▽`)


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