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  [ 星が刻んだ未来さえ 21 ]
2010-12-09(Thu) 09:15:10
パスタのあとにはコーヒーまでサービスされ、
俺は溜め息、2人はにこにこと笑顔だった。
しかもブレンドではなく、ウインナーコーヒーだ。
カップから溢れるんばかりの生クリームが、
腹立つくらい美味かった。
満足した俺達は、オルテンシアを出ることにした。
ご馳走様です、とレジ前にいる満さんに声をかけ、
颯爽と店内をあとにする彰彦と晋平。

ここへきて、俺が奢ることを思い出した。
サラダとかの料金は請求されないよな、
と考えつつレジにいる満さんへ、伝票を手渡す。

「ありがとうございます、舞斗君」
「いえ、こちらこそご馳走様でした」

満さんは伝票を手にすると、
ぽいっとごみ箱に捨ててしまった。
突然の出来事に、頭にハテナが浮かぶ。
そんな俺に満さんは、にこりと優しく笑った。

「あ‥あの、伝票‥」
「きてくれて嬉しかったのでお代はいりません。
 次にきてくれたらその時からもらいます」
「いや、そういうわけには‥」

ここをタダにされると、俺が困る。
次回の指名で、特別サービスを強要されかねない。
満さんはそんなことをする人ではないだろうけど、
恩や弱み、人ってのは誰でもそこを狙ってくる。

だからこそ、トレイに札を乗せた。
でも、満さんは笑うだけで目もくれない。

「受け取ってもらわないと俺が困ります」
強めに言うと、満さんは困った顔をした。
いや、困ってんのは俺なんですけど。

すると、満さんは突然携帯を開いた。
アドレスを教えろとでも言うのだろうか。
そういう時は店のルールで、
フリーメールを教えることにしている。

だけど、満さんの要求は違った。

「明日、バイト休みですね」
どうやらモバイルサイトで、
俺のバイトのシフトを見ていたようだ。

「ええ、まあ」
「それなら、明日夜、飲みにでも行きませんか。
 180分の料金、マージン抜きで払いますから」

店を通さないで客に誘われても、
鬼塚さんへと連絡するのが規則になっている。
マージン分客への牽制にもなるし、
トラブルがあった場合は店が対応してくれるからだ。

だけど、満さんとならトラブルは起きないだろう、
と俺なりに踏んだ。
加えていつも澄ましている満さんの、
酒に酔っている姿を見てみたい、という興味もあった。

にしても、パスタやサラダをサービスし、
バイト代を出すから飲み行こうとは、
満さんにはマイナスだらけじゃないだろうかと思う。
本人は、そこまで判っているのか判っていないのか、
終始いつもの笑顔のままだ。

俺がこくりと頷くと、明日の時間と場所を約束し、
手を振る満さんに手を振り返して、店を出る。
笑顔の彰彦と晋平が、俺のことを迎えてくれた。

「遅かったね、舞斗」
「まさか、サラダ代で揉めたか?」
あはは、と陽気に笑う2人。
その笑顔に脱力して、俺はつられて笑った。

おかげで、非日常の俺から日常の俺へと、
瞬時にして復旧する。
晋平と彰彦に、こうやって俺は救われているんだ。
それを改めて感じながら駅へと向かった。

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