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  [ 星が刻んだ未来さえ ボーナストラック ]
2011-03-01(Tue) 06:10:51
両思いになった翌日。
講義中、胸ポケットの携帯が震えた。
どうやら満さんからメールが入ったらしい。
机の下で、こっそりチェックすると、
これを見て下さい、というメッセージと、
ニュースサイトのURLがあった。

それを開くと、俺は少しだけ目を開いた。

カンフルツリー製薬株式会社新薬研究チーム
がん遺伝子治療用に研究用試薬を開発・発表
マウスでの成功率高く世界が注目し今後に期待大

身内の会社の自慢か、菅生さんについての話題か。
満さんに限って、とりあえず前者であるはずはない。
そんな人じゃないってことはよく知っている。

講義終了後、晋平が待っている学食へ向かいながら、
メールが気になってコールを鳴らした。
満さんなら今、店のカウンターにいると思う。
忙しくなければ電話に出てくれるだろう。

「はい。どうしましたか?」
ほら、やっぱり出てくれた。

「さっきのURLは何だったんですか?」
「言わなくても判るでしょう」

くすりと笑う声が聞こえる。
やっぱりと思いながら、俺も笑う。

「殺さなくて良かったですよ。
 こうしてきちんと社会に貢献しているのですから」
恐ろしいことを言っておきながら、
きっといつもの穏やかな顔をしていることだろう。

俺に使っていた薬を作りながら、
もしかしたら新薬を発見したのかもしれない。
俺も満さんもきっと同じ考えをしている。

身から出たサビか、棚から牡丹餅か。
文系は苦手で、いいことわざが思い浮かばないけど、
兎にも角にも、おめでたいってことだ。

「だから、そういうこと言わないで下さいって」
「それよりも報告があるでしょう?」
「報告?満さんヤキモチ妬いてますよね?」
「まさか。でもやっぱり気になることは気になります」

講義前、前のバイト先へいった。
滞在したのはたった5分間だけだったけど。
そうじゃないと満さんが妬いちゃうから。

しばらくバイト先へは行かないつもりだった。
だけど、渡したいものがあると凛さんからメールがきて、
満さんに伝えてから行った。

そこには相変わらずな鬼塚さんと、凛さんが待っていた。
これから講義があるからあまり時間がなくて、
と伝えると紙袋を渡された。
中にはクールなデザインのトップスが入っている。

「このブランドの話をしたの覚えているかな?」
「えと、覚えている気がします」

覚えてるような覚えてないような俺は、そう答える。
やばいな、凛さんとトップスの話なんてしたっけかな、
と考えたのが態度に出ていたらしく、
凛さんと鬼塚さんに笑われた。
俺は恥ずかしくなって真っ赤になった。

「ったく、ウソつくの下手すぎるって」
「それがマイトのいいとこでしょ、鬼塚さん」
「‥すみません」
「いいよいいよ、俺もそんな気がしたから。
 これ、俺がデザインして作ったオリジナルなんだ。
 覚えてなくても褒めてくれたの嬉しかったから、
 バイト退職記念ってことで、プレゼントさせてよ」

多く語らない謎の凛さん。
だけど、デザイナーを目指しているらしい。
俺は、素直にそれを頂戴した。
そんな5分間の滞在だったと、満さんに伝える。

「そうですか。楽しそうで良かったです」
「はい。それじゃあ友達と昼食とってきます」
「いってらっしゃい。ではまた今夜にでも」
「はい、またあとで」
ぷつんと通話が終了した。

満さんの会議のない日は、会えるだけ会おうと決めてある。
1分でも1秒でも、できるだけ一緒にいたいから。
もちろん時間があれば、ごはんを食べてまったり過ごして、
そのあとを説明するのは野暮ってもんかな。

「おい、舞斗」
食堂の前で待っていた晋平が手を振っていた。
面倒でも見つかったからには小走りで駆けつけてやる。

晋平は、金髪から茶髪にした。
彼女と彼女の友達に、どうやら不評だったらしい。
まあ、晋平の顔つきにあんまり金髪は合わなかったし、
これでいいんじゃないかと、俺も思う。

「待たせて悪い」
「本当に待ったぜ3分も」
にししと白い歯を見せた、晋平。

「彰彦が席とってくれてるから俺達も行こうぜ」
「うん。さてと何を食べようか」
「とか言って、舞斗っていつも天丼だよな」
「え?そう?」
「ほらきた。自分には関心ない発言」

俺はこれまで自分にあまり関わってなかった。
言われてみて初めてそうだと判る。

「だったら、今日は晋平と同じの食べる」
「それなら天丼にしてやろうか」
晋平に軽くパンチをして俺達は笑った。

晋平は悩んでハンバーグ定食を頼み、
言ったからには俺もそれを食べることにした。
トレイを手に彰彦の傍へいったら、
テーブルには同じものが乗っかっていた。

「あれ、天丼じゃないんだね舞斗。
 傘持ってきてないんだけど平気かな」
笑う彰彦の正面に座り、俺の隣には晋平が腰を下ろす。

俺は平穏な日常の中で、笑いながらごはんを食べた。

ボーナストラックは、みんなの後日談でした。
ありがとうございました!


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星が刻んだ未来さえ 67(R18)(完)HOMEその手はひとつじゃない(星刻番外編) 目次

COMMENT

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拍手を下さったM様

こんにちは!コメントありがとうございます!
舞斗と満のお話にお付き合い頂き、ありがとうございました。
紆余曲折はありましたが、無事にカップル成立しまして、
なぜか私がほっとしております(;≧∇≦)

私が書かせて頂いたのは、舞斗と満の出会いから
両思いに至るまでですので、今後の2人については、
どうか想像(妄想?)の中でお楽しみ下さい。
私の中での2人は、死ぬまでお互いに敬語なんだろうな、
というイメージです(笑)
菅生については「ふん、お前にしてはやるじゃないか」と、
ちょっとツンデレ風に皆様に思って頂けたなら、
この結末で成功だったかなと思っております(*´ー`)

そうですね、何事にも始まりがあれば終わりがありますが、
星が刻んだ未来さえが終わり、私も少し寂しいです。
それ故に、番外編をこれから始めようと思いますので、
あと少しだけ、彼らにお付き合い頂けると嬉しいです♪
b y 水色 | 2011.03.04(06:00) | URL | [EDIT] |
  +
拍手を下さった萌え人様

初めまして!コメントありがとうございます!
星が刻んだ未来さえ、面白いと言って頂けて嬉しいです(≧∇≦)
年齢差+敬語攻&エロで始まりエロで終わるという、
私の中で最もエロい作品に位置づいております。
今後も面白いと言って頂ける作品を書けるよう精進致します。
コメントありがとうございました(*´∀`)
b y 水色 | 2012.04.19(05:59) | URL | [EDIT] |

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