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  [ 青い空を見上げて3rd 1 ]
2011-03-28(Mon) 05:50:05
笹崎侑津弥


これから暑くなる頃だった。
ジョーと街へ行って、シャツとか色々買って。
カフェに入って休んで出てきたら、
ジョーが買い物した袋を忘れちゃって。

それを、ジョーが取りにいっている間、
俺は暇でガードレールに腰を下ろしぼーっとしていて。

かしゃ、という音がした。
見るとカメラを構えている人がいた。
風景の撮影か、と思っていたらその人が、
こっちへ向かって歩いてきた。

「こんにちは」
知らない人に、いきなり挨拶された。

知らない人には、話をしたり付いていくなと、
ジョーから子供にするような注意をされたことがある。
言われなくても俺だってそのくらい判ってるけど、
でも、この人の雰囲気が柔らかく、俺はつい言葉を返した。

「‥こんにちは」
「いい天気だね」
「‥そうですね」
「空を眺めるのが君は好きなの?」

いきなりの質問にびっくりした。
出会ったばかりのジョーにされた質問とそっくりだ。
そのせいか、すんなり返答してしまった。

「‥あ、はい」
「やっぱり。空を見る目が、とても優しいから」

にこりと微笑まれて、俺もつられて笑った。
すると、その人はカメラを構えた。

「僕、雑誌のイケメン特集のために撮影しているんだけど、
 撮らせてもらっても構わないかな?」
「‥は?いや、あの、ダメです」

俺がしどろもどろで断ると、
その人はちょっとびっくりした顔をした。
「イケメンの撮影で拒否されたのは、これが始めてだよ」
「‥別に俺、イケメンじゃありませんから」

言うと笑われた。
笑われたのが恥ずかしくて、かあっと顔が熱くなる。
真っ赤になった顔を見られたくなくて、
ふいっと横をむいたとこを撮られてしまったのか、
隣でかしゃっと音がした。

「ごめんね。いい顔だったから撮っちゃったよ」
ふっと優しく笑われた。
撮られたものを消すことはできず、俺はもう諦めた。

「僕はイケメンを撮るだけなんだ。
 雑誌に載せるかどうかは編集が決めるから、
 掲載されるようなら連絡してもいい?」
俺なんかが雑誌に載るはずがない。
そんな自信があって、俺はこくりと頷く。

「‥いいですよ」
「じゃあこれに記入してもらえる?」

小さなメモとペンを渡され、名前と携帯、
学校と学年を、さらさらと書いていった。
これには既に数十人の名前等が書かれてあり、
さっきより、雑誌に載らない自信が沸いてくる。

書いたものを渡すと、その人に訊ねられた。
「雑誌に載せるなら本名を使っていいかな?」

まさか、それだけは勘弁してほしい。
そう思って、首を横に振る。
すると、その人は閃いたような目を見せた。

「それなら、イニシャルのSとUで、
 スウっていうニックネームはどうかな?」
「‥スウ?」
「そう。中国では4という意味にもなるよ」

4という数字ってのは、
中国ではどうか知らないけど日本ではあまり好かれてない。
それこそ俺らしいかも、と息を吐く。
そんな俺の考えを読み取ったのか、その人は言った。

「日本では好かれない数字だけど、
 ちゃんといい意味になる場合もあるんだよね」
言ってその人は、俺に一枚の紙を手渡す。
俺はそれを目にして、なるほどと納得させられた。

なぜなら。

「クローバーは、幸せを運ぶでしょ?」

スタジオクローバー、と書かれた名刺を渡された。
名前は、青柳四葉。
男性がどれだけ有名なのかは、俺はあとで知ることとなる。

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