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  [ 蒼空と流星の狭間 29(完) ]
2011-10-21(Fri) 20:30:05
笹崎侑津弥


満さん達は、仕事も大学も午後からに調整してて、
午前もあちこち観光し、夕方のフライトで帰宅するという。
学生の俺達は当然、明日も普通に学校で、
正午のフライトを予約していた。
従ってゆっくりしている暇はあまりない。
でも、ちょうどよかったかもしれない。
早く帰る分、疲れも残らない。
それに、夜にジョーと少しゆっくりできる。
俺にはそれが楽しみだった。

本当なら昨夜、ここのスイートルームで、
ジョーとそういうことができるはずだったけど、
ホテル側のミスでそれは叶わなかった。
でも、アンラッキーなんかじゃない。
これもまた思い出になるって俺は信じている。

それに、ジョーも言ってくれた。

時間はあるし来年くればいいって。

俺達はこれからもずっと一緒だから。

「ウツミ、にやにやしてどうした?」
テーブルを片していたホテルマンが去ってから、
オレンジジュースを飲んでいたジョーが訊ねてきた。
しかも、ちょっと苦笑いしている。

ジョーが苦笑いするほどおかしな表情だったらしい。
恥ずかしさのあまりジョーを睨みながら、冷たく答えた。
「‥別に」

はあ、こういう自分がイヤだ。
恥ずかしがらないで思っていることを言えればいいのに。

場のムードを壊したくなくて、席を立つ。
トイレに行って、頭をちょっと冷やしたかった。
用を足し、手を洗い、ついでに顔もざぶざぶと洗った。
顔を上げて鏡を見つめる。

瞬間、俺が、顔のよく見えない誰かと、
セックスしているシーンが、
フラッシュバックの如く頭を過ぎっていった。

ぞくりと体が冷たくなる。

これ何だよ、どういうことだ。

顔がよく見えないのが気になる。
俺とセックスするのはジョーしかいないに決まってるけど、
でも、それなら、こんなにイヤな感じはしない。

判らなくて怖い。

すると、鏡に映る俺の首に、小さいキスマークを見つけた。
ぶるっと震えた時、トイレのドアがノックされた。

「ウツミ、ちょっといいか?」
ジョーの声にほっとしてドアを開ける。
そこには、しょぼくれているジョーがいた。

「‥何?トイレ使うの?」
「あ、いや、さっきはごめん」
「‥え?」
「ほら、ウツミが楽しそうに笑ってたの、
 からかっちゃったからさ」

それをわざわざ言いにきたのか。
俺がいけないのにジョーが折れにきてくれた。
ここは、ちゃんと素直にならないと。

「‥昨日、ジョーが俺に言ったこと思い出してた。
 そしたら、嬉しくて笑ってた。ジョーは悪くない。
 こっちこそ不機嫌になってごめん」
「昨日の台詞?俺どんなこと言ったっけ?」
「‥時間はあるしまた来年くればいいって。
 ジョーにそう言ってもらえて嬉しかったから」

言うとジョーが赤くなった。
ジョーもこうやって照れたりするんだな。
こういう顔されるのも悪くない。

「ああ、あれな。あれはさ、ほら、
 俺達はこれからも一緒なんだからさ、
 今にそんなに拘るなってことだよ」
「‥うん、そうだね」

慌てているジョーに笑いながらキスをする。
えへへと笑うと、ジョーも笑った。
さっきのフラッシュバックは、もうどうでもいいや。
気のせいだと思うことにしよう。

すると、ジョーが俺の首を見つめた。
「うわ、やばい、これ俺かも」
「‥これ?」
「ウツミにキスマークつける、リアルな夢を見たんだ。
 まさか、マジでやってたなんてな。ごめん」
「‥いいよ、これくらいならすぐ消えるだろうから」
「ん、ならいいけど、これからは気をつける」

キスマークは見えないとこにつける。
暗黙の了解が、ジョーと俺の間にあった。
それは、恋人でいるために大切なものだけど、
こういうイレギュラーだってある。

「ウツミ早く帰ろう?」
「‥うん」

早く帰り、することはただひとつ。

俺とジョーはリビングに戻ってから、
ゆっくりと帰り支度を始めたのだった。

前話へ

蒼空と流星の狭間、これでおしまいとなります。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました!

パラレルワールド的なお話ではございましたが、
ふふふ、さてはて、それはどうでしょうか。
彼らにとっては夢だったのか、それとも‥
それは、皆様のご想像にお任せしたいと思います。
(実はこういうエンディング嫌いではありません♪)

さて、やっと、ようやく新作に突入します。
その前に、今後の予定の独り言と、
絵チャに参加した時のレポを、掲載する予定なので、
つるっと読んで頂けると幸いです。

これでまたしばらく彼ら4人とお別れになりますが、
またどこかでお目にかかれますように!


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