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  [ 見知らぬとこで七色が 1 ]
2011-10-27(Thu) 05:00:00
ふと目が覚めた。
ひゅう、と風が吹き、寒くて丸まった。
丸くなっても寒くて、目を開けながら体を起こす。
どこかの公園のベンチに寝転がっていた。
どういう経緯でここにいるのかの記憶がなかった。

まあ、そんなことは、どうでもいい。
さっさと帰って、さっさと暖まろうじゃないか。

俺の家、どこにあるんだっけ。

あれ、それに、ちょっと待ってくれ。

俺は誰だ。

ここはどこなんだ。

ベンチ脇にはカートが置いてある。
これは俺のなのか。
そんなことさえ、さっぱり判らない。

そうだ、カートの中を見てみれば何か判るかも。
ここには俺しかいないからきっと俺のものだろうし。

俺はカートを乗せ、ファスナーを開いていった。
洋服数着と、雑誌やらお菓子やら、
ざっくりと入っているだけで、
俺のことが判るようなものは入ってない。

いや、もしかしたら、俺は自分の服に、
名前を書くような律儀な男かもしれない。
と、実行するも成果はなく、
俺はそんなマメじゃないことだけは判った。

絶望しかけた瞬間、ぴんと閃いた。
今着ているこの洋服だ。
どこかに、俺についてヒントになるような何かが、
あるかもしれない。

俺は上着を脱ぎ、ポケットを探りまくった。
ジャケットの内ポケットから、ハンカチが出てきただけ。
残念ながらやはり名前はない。

次にジーンズのポケットを探ると、
かなりのアイテムをゲットすることができた。
それは財布と携帯だった。
俺はどうしてこの存在をすっかり忘れていたのか。

まずは、財布の中身を拝見。
小銭合わせて5万入っていた。
金があることに喜びたかったけど、
まさかこれ、どこかから盗んだ金じゃないだろうな。
ついそんなことを考えてどきどきした。

しかし、レシートはおろか、カード類が何もない。
割引券とか診察券とか、免許すらも何一つなかった。
俺は、カードを所持しない性格のようだ。
札束があってもカードがないと意味がないっての。

いや、待てよ俺。

財布なんかよりも情報のあるであろう携帯が、
ここにあるじゃないか。
今時、個人情報になるものを持ち歩かない老若男女は、
どこにもいやしないのだ。

携帯は、いわゆるスマートフォンというやつだった。
スイッチを入れると、パスワード入力の画面になった。

パスワード、だと。

俺が誰で、ここがどこかも判らないのに、
パスワードなんぞ記憶にあろうはずがない。
はあ、と空を見ながら溜め息をついた。

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