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  [ 見知らぬとこで七色が 2 ]
2011-10-28(Fri) 09:05:43
パニックになってもおかしくないのに、
どうしてこんなに落ち着いてられるんだろう。
きっと、元々こういう性格なのかもな。
さて、これからどうしようか。
警察へ直行、ってのが妥当だろうけど、
変人扱いされること間違いない。

こういう場合だったら病院がいいのか。
でも、病院へ行こうにも保険証を持っていない。
5万もあるならそんなのなくても平気だろうけど、
CTとかMRIとか、撮られる可能性を考えると、
5万だけではちょっと心許なかった。

そもそも、どうして記憶喪失になったのか。
CTと思い浮かべるあたり頭を打ったかもしれない。
頭をあちこち探ってみると、大きいこぶに触れた。
触ると痛いし、これが原因だろうと推測する。

それにしても、こぶで済んで助かった。
出血でもしてそのまま意識なんかなくしていたら、
今頃きっと俺死んでた。

そう考えて、ぞっした。
死というものに直面して怖くなったのか、
震えがちっとも止まらない。

いや、どうも違うな。

体が痛くて汗が流れる。
それに、こんなに着込んでいるのに悪寒もする。
寒いのに汗なんて、もしかして風邪じゃないのか。
服をたくさん着ていても、こんな寒い中で寝てたら、
誰だってすぐに体をおかしくするって。

しかし、いよいよまずいことになってきた。
とうとうここからの身動きがとれなくなった。
コンビニに行くことすら辛いかもしれない。

コンビニって、コンビニエンスストアだよな。
俺が誰なのかすら未だ判らず、
ここがどこかも判らないくせに、
コンビニの存在や略称は理解してるのかよ。

ちゃんちゃらおかしい。
おかしいのに、苦しくて笑えない。
とうとう運も尽きてきてか。

これからマジでどうしようかな。
と、目の前に、男女のカップルが出現した。
「あの、具合悪そうですけど大丈夫ですか?」

女の子が、心配そうに質問してくる。
俺はよっぽど顔色が悪いらしい。

「ありがとう。でも大丈夫だよ」
「病院に行くなら一緒に行きますけど?」
メガネの男の子が俺の顔を覗き込んできた。

通行人は、俺をスルーして歩いていく。
それなのに、男女はこんなにも心配してくれている。
今時どこにもいない素晴らしいカップルだ。
でも、せっかくのデート中に水を差したくない。

「デート中だよね?俺になんか構わなくていいよ」
「デートはいつでもできますけど、
 苦しそうなあなたを助けられるのは今だけなんです。
 ねえ、康太?」
「だよね。どうもお節介ですみません」

天使のように微笑んでくる2人。
2人の優しさに緊張が緩む。

瞬間、ふっと体の力が抜けた。

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