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  [ 決めたゴールを走れ 74 ]
2012-05-06(Sun) 02:00:00
「で、聖はどれが食べたいって?」
楠さんと舞斗君が去ってから、光さんが訊ねる。
どうやら俺に食べ物を運んでくれるらしい。
しかも、怒ったように聞いてくる。
そんな素直じゃないところが可愛いくて、
にやにやを堪えながら答えた。

「どれでもいいです」
「あっそ。そこで待ってろ」

食べ終えた空の皿と、フォークを手にした光さんは、
ビュッフェへ行ってしまった。
そして、盛るだけ盛って、つかつかと戻ってくる。

ローストビーフのサラダ、パンにチーズにハム、
フルーツまで更に乗っていた。
厚めのローストビーフにフォークを刺し、
少し赤くなりながらもそれを口に近づけてくれる。

「ほら、とっとと口開けろ」
言いながら照れている光さん。
それが感染して、俺までも照れた。

でも、嬉しくて笑った。
すると、光さんもにこりと笑う。

手はケガして痛いけど、ケガしてよかった。
なんて思いながら、あーんと口を豪快に開けた。

「前澤チーフ!取材いいですか?」
こんな時に限って、メディアが俺の傍に寄ってきた。

それぞれの腕章を確認させてもらうと、
テレビ局が2社、雑誌が3社、という感じだった。
しかも、いいともだめとも言っていないのに、
早くもカメラのシャッターが切られてしまった。

光さんが慌てて、フォークを下ろす。
だけど、カメラマンは独り言のように、
いいショットが撮れたと呟いていた。

「取材だったら監督かオーナーの許可がないと‥」
「先程、八剣オーナーから許可頂きました」

言われてオーナーを見ると、目が合い、
こくりと笑いながら頷かれた。
こちらには取材の有無の意思はないってわけか。

「取材いいですか?前澤チーフ?」
「え?はあ‥まあ‥」
「それではまず今節優勝おめでとうございます」
「あ‥ありがとうございます」

光さんは取材が始まると、気を利かせてその場を去った。
しかも、ローストビーフの皿を持ったままで。

ああ、いいムードだったのに。

それに、腹もまだ満たされてないのに。

恨めしい気持ちを抱きながら、俺はメディアと話をした。

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