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  [ 雨上がりの最果てで 3 ]
2012-12-04(Tue) 05:05:00
いつも通り倉庫の整理を行っていた。
それから、ヘルプでレジに来てくれと言われたから、
1Fにある文具階のレジを手伝っていた。
店舗の営業も終了し、バックヤードの残務があるのみ。

あと1時間したらバイトが終了する。
その前にちょっと休もう。
レジにバックヤードに、ハードで疲れた。

非常階段で、缶コーヒーを飲む。
飛行機が、夜の中でちかちかと光を放つ。
遠くに見える星も、とてもキレイだ。
俺、こういう景色が幻想的で大好きなんだ。

そんな時だった。

ばん、とドアが開いた。

横を見ると波多野が扉を出てきた。

顔を赤くして息を荒げている。

「波多野?どうした?」
俺からそう声をかけて、
ようやくこっちに気がついてくれた。
瞬間、泣きそうな顔になった。

「仲村‥さん‥」
「何?どうしたんだよ?」
「あの‥俺‥俺‥」

何か言おうとして口を噤んでしまった。
息を荒げたまま目を逸らされる。
言おうかどうしようか考えているようだった。

「どうしたんだって?なあ?」
「誰にも‥言わないで欲しいですけど‥」
「うん、判った。それでどうした?」
「柏葉さんと佐伯さんが‥2人が‥室内で‥」

波多野は目を逸らしたまま俺を見ない。
俺のシャツを掴んできた手が、
ふるふると震えている。
耳も顔も、熟したリンゴのように赤かった。

すぐにピンときた。
2人のキスシーンを目撃したんだろうと。

「キスしてた?」
そう言うと、波多野は驚いたような目になった。
どうして判ったんですか、とでも聞きたそうな顔だ。
にこりと俺が笑うと、波多野はゆっくり深呼吸をして、
顎まで落ちた汗を、ぐいっと手の甲で拭った。

「そうです。キス‥していました‥」
「そっか」
「仲村さんも目撃したこと、あるんですか?」
「うん。少し前に、たまたまね」

波多野が、くっと目を細めて、
ぺたりと力なく座った。
目撃した現実を、どうにかして処理しようとしている。

「イヤだった?」
優しく訊ねると、波多野は困った顔になった。

柏葉さんも佐伯さんも、いい人達なんだ。
俺達がバイトだからって見下したりもしないし、
いつだって気にかけてくれたり優しくしてくれる。
冗談を言って一緒に笑ったり、
クレームがあれば真剣に対応してくれるんだ。

そんな信頼のある人物だからこそ、
波多野はキスシーンに混乱したのだろう。
俺にしては珍しく、ちょっと意地悪な質問をしたかな。

「ごめん。変なこと聞いた」
「いいんです。イヤ‥ではありませんでした‥。
 ただ、人のそういうの見るのが初めてだったんで、
 びっくりして‥ちょっとパニックに‥」
「そっか。まあ、落ち着いて落ち着いて」

波多野の背中を、ゆっくり撫でながら、
缶コーヒーを渡した。
すみません、と呟きながらそれを飲むと、
ほっと安堵した表情になる。

間接キスくらいで喜ぶような年頃ではないが、
返された缶コーヒーに、どきどきしてしまった。

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