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  [ 雨上がりの最果てで 4 ]
2012-12-06(Thu) 09:55:00
波多野がゆっくり深呼吸をする。
ようやく落ち着いたらしい。

波多野が飲んだあとの缶コーヒーを、
どきどきしながら、ちびりと一口啜ってみる。
コーヒーのほろ苦さが胸へと染みた。

「波多野、もう仕事終わり?」
「はい、一応」
「それなら帰ろう。ここにいてもしょうがないし」

そう言うと、ぽつぽつと雨が降ってきた。
だけど、空にはキレイな星があちこちに見えている。
雨はそんなに降らないと思うけど、
言った通り、ここにいてもしょうがない。

「そうですね」
波多野がまた深呼吸した。
徐々に、安堵したような表情になる。

「どっかで何か食べてく?」
「まだショックが‥ちょっと‥」
「そっか。いいよ、また今度行こう」
「すみません」
「明後日は?やめとく?」
「それは大丈夫です。レベル上げるの楽しみだし。
 ほら、仲村さんのキャラの武器だって、
 レアアイテムがないと作れないんでしょう?」
「ん、まあ、そうだけど」

俺達はゲーム好きなのが共通点だ。
通信できるゲームだけど各自でプレイしたり、
一緒に旅をしたり冒険に行ったりする。
たまに、どっちかの家に泊まったりして、
レベル上げのフォローやアイテム集めもしている。
またやろうということで、明後日、
波多野家でゲームをやる約束をしていた。

ゲームで遊ぶのは大丈夫だって言ってるけど、
マジでいいのだろうか。
こんな時くらいやめてもいいのにって思ってしまう。

まあ、ゲームで遊ぶのは良しとして。
最近の波多野は時々、俺のことを誘ってんのか、
という感じに甘えてきたり、上目使いで誘惑したり、
ふにゃりと蕩けるように笑ってくる。
もちろん、本人にとっては無自覚であり無意識なんだろう。

何度も襲いそうになって何度も堪えてきた。
伸びそうになった手を、思わず叩いた時もあった。
だからこそ、どっちかの家に泊まってまで、
ゲームをするのはそろそろやめたい。
バカみたいだけど、好きすぎて堪えられない。

何でもいいから理由をつけて離れてもいい時期だ。
4月からは大学生にもなる。
学校が忙しくなりそうだっていうのを波多野に言って、
泊まるのはこれで終わりにしよう。

俺達は帰りの支度を済まし、タイムカードを押した。
外ではまだ雨がぽつぽつと降っている。
急いで駅まで行って、方向が同じ電車に乗り、
先に降りた波多野に手を振った。

精一杯の笑顔の波多野が、俺に手を振る。
ドアが閉まり、電車がゆっくり発車していった。
あっという間に波多野が見えなくなる。

諦めようと思ってんのに、きゅんと胸が痛くなった。

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