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  [ 雨上がりの最果てで 57(完) ]
2013-03-06(Wed) 06:00:00
軽めにシャワーを浴びてから、
ベッドに並んで横になった。
波多野が、俺の手をそっと握り締める。

「何?どうしたの?」
「幸せだなって思ったら、
 仲村さんの手握りたくなっちゃって」
「そっか。俺もすごい幸せだよ。
 両想いだなんて想像できなかった。
 波多野のこと好きだって自覚したのは、
 佐伯さんと柏葉さんなんだよね」

佐藤文具店の佐伯さんと柏葉さんの、
男同士のキスシーンを目撃したことがあった。
その直後、偶然にも波多野と遭遇して、
自分の感情を、それがきっかけで知ることができた。

伝えると波多野に驚かれた。
大きな目が、もっと大きく広がる。

「実は俺も、そうなんです。
 ほら、仲村さんが入院しちゃう、少し前に、
 そういうことあったじゃないですか」
「ウソ。マジで?」
「マジですよ。こんなことでウソつきません。
 うわあ‥信じられないですよ俺‥」

あのキスシーンがあったからこそ、
俺達は秘めていた感情を知ることができた。
まさかの偶然にびっくりした。

「だから、実はあんなことされて嬉しかったんです」
「あんなことって?」
「ほら、あの、前にここへ泊りにきた時、
 トイレに行こうとした俺を、仲村さんが‥」

前にここへ泊りにきた時、したことと言われたら、
俺が波多野を襲い、むらむらと体が疼いて手を出した、
ってことしかないだろう。
あの時の自分が恥ずかしく、かあっと赤くなった。

「ごめん」
「え?どうして謝るんですか?
 嬉しかったって言ったじゃないですか」
「あ、うん、そうだけど‥」
「あの時ちょっとだけ思ったんですよ。
 仲村さんは‥俺のこと好きなのかなって‥」

でも、その後のバイトでのムードが悪かった。
波多野を突き放そうとして俺は尖ってしまったのだ。
だってしょうがないだろう。
波多野とまさかの両想いだなんて、
これっぽっちも思えなかったんだから。

「でも、そんな都合のいい偶然なんかない。
 そうやって言い聞かせて俺は過ごしました。
 そうしたらバイト中であんなことになったから、
 すごい悲しくて泣いちゃって‥えへへ‥」
波多野は潤んだ両目を擦った。
その時の出来事が過ったのか、
ごまかすように、わざと明るめに笑っている。

ずきんと胸が痛くなった。
だけど、その当時の波多野のほうが、
もっともっと胸が痛かっただろう。
時間が戻せるなら戻せないけど戻せるはずがない。

詫びるように俺がキスすると、波多野の顔に笑顔が戻る。
その波多野の視線が、ふと窓の外に向いた。
静かにしていると雨音が聞こえてくる。
雨音は、穏やかにさせてくれるような音がしていた。

「雨が‥降ってる‥」
「そうだね」
「仲村さん、知ってます?
 俺達に何かある時っていつも雨なんですよ」

波多野が、佐伯さんと柏葉さんのキスを目撃したのも。

俺が波多野を守り、怪我をして搬送されたのも。

波多野が俺にキスをして愛情を与えてくれたのも。

こうして、波多野と、やっと結ばれたのも。

「本当だ。いつも雨が降ってる」
「俺、あんまり雨って好きじゃなかったけど、
 ほんのちょっと好きになりました」
「うん。俺も好き」

雨が降る中、俺達は目を閉じて耳を傾けた。

前話へ

雨上がりの最果てで、これでおしまいです。
ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございました。

このお話は、郁央と波多野を中心に、
サブキャラによる裏話をたくさん登場させました。
他の話の複線回収が、少しだけできた気がします。
こういうの、個人的には大好きなもので(笑)

郁央と波多野のお話、いかがでしたでしょうか。
郁央が幽体離脱が、ちょっぴりファンタジーでした。
このブログでファンタジーを書くのは初めてで、
個人的にはなんだかくすぐったい気持ちでしたが(笑)
上手にファンタジーを表現できたでしょうか。どきどき。

2人がカップル成立となった時点で、
一区切りつけたくてこれで完結致しましたが、
次回からの番外編も2人なのです(笑)
すみません、でもエロあるので許して下さい(笑)
番外編は、今後にかかせないお話になります。
エロも含めて、少しでもお楽しみ頂けると幸いです。

このお話は下書きがすらすらと面白いほど進み、
途中でほぼ毎日の更新となりました。
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趣味での執筆ですが、応援があるのとないのとでは、
やる気が全然違ってきます。本当に感謝です。
これからも、マイペースで頑張ります


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