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  [ 君とは幸せになれない 1 ]
2013-03-20(Wed) 03:55:57
当店の店長は、スーパーバイザーも兼ねていた。
しかし、エリア展開が加速してきて、
店長業をすることが困難になってきてしまい、
役職がスーパーバイザー一本となったのだ。

そして、次期店長が、なぜだか僕に決まった。

理由は単純で、年上でしかもただの古株だからだ。
一応、リーダー職には就かされていて、
店長の代理みたいなことを地味に細々とやっていた。

店のオープン前に、スタッフの前に立たされた。
僕の隣で、楠スーパーバイザーが笑っているけれども、
こちらは全く笑えなかった。
ひっそりこっそりと過ごしていければいいのに、
なぜこんなことになってしまったのだろう。

「という訳でして、今日から大津さんが店長です。
 私もしばらくはフォローに伺いますので、
 今後とも宜しくお願いします」
楠さんが言うと、スタッフが僕のことを見た。

楠さんも僕のことを見て、こくりと頷いてくる。
何か言え、ということらしく、こほんと咳払いをした。
こういうの苦手なんだけど仕方ない。

「大津です。 今日からここの店長になりました。
 古株ですが店長としては新人なので、
 これまで以上にお手柔らかに、宜しくお願いします」
いかにもやる気がなさそうに、ぺこりと頭を下げる。

すると、あちこちから笑い声が聞こえてきた。
顔を背けながら口を押えている者も見えている。
特に目の前の、仲村君と藤ヶ谷君は、
真っ赤になっているのがイヤでも目に入った。
まあ、楠さんも笑ってるし、掴みは上々と見える。

「それでは、私はこれから本社へ行ってきます。
 大津さん、業務で判らないことがあれば連絡を下さい」
「はい、判りました」

僕は頷いてみせたが引き継ぎはしてあるし、
店長としての業務も、ほんのちょっと経験はしてきたから、
イレギュラーでもなければ何とかなるだろうと思う。

楠さんがここを出てから、オープン準備をする。
ドレッシングの補充をしていると、
すすっと近寄ってきたのは仲村君だった。

「楠さんがいなくて寂しくなりますね、大津店長」
「いやいや、それはよしてくれよ。
 これまで通りでさんで呼んでくれないか、仲村君」
「せっかく店長になったのに、今まで通りですか?」
「店長、なんて呼ばれたらくすぐったくて堪らないよ」
「いいじゃないですか、大津店長で」

止めを刺したのは、藤ヶ谷君だった。
この2人はいい意味で、いいコンビなのだ。
仲村君は21歳で、藤ヶ谷君は20歳。
ここでは一番若手でもあり、
しかも、バイトにきた時期がほとんど一緒である。
だからなのか、やたらと気が合うらしい。

「仲村君だけじゃなくて藤ヶ谷君まで。
 頼むから今まで通りで呼んでくれないかい」
「しょうがない。店長ってのはやめますよ大津さん」
「あはは、ありがたい」
笑って答えると、藤ヶ谷君は、
長い髪を結びながら白い歯を見せた。

「ところで、女友達いません仲村さん?」
「藤ヶ谷ってまだ彼女探してんの?」
「そうですよ。もちろんじゃないですか。
 はあ、どこかに可愛い女子いませんかね」
「坂村さんとか可愛いじゃん」
「残念ながら年上は、タイプじゃないんです」
2人はモップで掃除をしながら、楽しそうに話している。

仲村君には恋人がいる、というのを噂では知っていた。
藤ヶ谷君は、恋人が欲しいといつも言っている気がする。

さて、そろそろ店がオープンする。

みんなは持ち場に入って、僕はレジに立って、
お客様をお出迎えした。

次話へ

君とは幸せになれない、連載開始です。
一人称が僕なのは初めてですね。
2人の行く末を、温かく見守って下さい。


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