BLUE BIND
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水色も伸ばして寄付する予定です。
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これは皆様もご存知のはず。
実は私、献血大好きなのです。
いつも400取ってもらってます。
体力的・時間的に余裕のある方々、
ぜひご協力をお願い致します。
日本赤十字社
寄付や献血を、行ったり訴えることが、
キレイ事に見えても構いません。
必要としている人がいるのは確かです。
実質的な行動はなくとも、
こういうのがあるということを、
知ってもらえるだけでも嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
[ 青い空を見上げて 6 ]
2010-05-07(Fri) 08:21:14
阿久津城
「おーい!笹崎!」
「‥っ」
笹崎が、ぎくりと体を震わせた。
大きな声でいきなり呼ばれて驚いたらしい。
恐る恐るこっちに首が回る。
声の主が俺と判り、ほっと安心した表情になると、
すぐに目を吊り上げた。
すたすたと俺を通り過ぎていって、
手すりに寄りかかるように腰をおろす。
怒り7割、驚き3割、という顔をしながら、
手にしたビニールからパンを取り、
俺を見ないままそれを食べ始めてしまった。
さすが、無視キング笹崎。
無視するレベルが半端じゃない。
だがしかし無視されるほど近寄りたくなる。
負けず嫌い、ではないけど、このまま引き下がれない。
俺はハシゴを降りて、笹崎の隣にすとんと座った。
「悪い悪い。びっくりさせて」
「‥うん」
「あのさ、ここって立入禁止なんだけど?」
「‥うん」
笹崎は、こちらを見もしないでコロッケパンを食っている。
「扉の鍵、壊れてるのよく判ったな。すっげ観察力じゃん」
「‥うん」
「あれを壊したの俺なんだ」
「‥そう」
やっぱり会話にならない。
誰ともコミュニケーションは取らない、てか。
自分で言うのも何だが俺はかなり温厚だ。
それでも、俺のこめかみに怒りマークが浮かびそうになる。
ふと、間近な笹崎を、じっと見つめた。
改めて見ると、笹崎は男のくせに色白い肌をしている。
顔のパーツが整っていて、まつ毛が意外と長かった。
近距離で、ここからだと耳のほくろが見えるくらいだ。
って、どんだけ傍に寄ってるんだ、俺。
笹崎がいつもしているチョーカーは和柄っぽい。
紫色と黒の模様で、小さいベルトみたいな形をしている。
だけど、それはまるで、飾りというよりは戒めのようだった。
自分をぎっちりと拘束するかのような首輪。
なんて、そこまで気にすることないか。
男のチョーカーが珍しくて、ついつい考えすぎた。
笹崎は、コロッケパンを残したままコーラを飲んでいる。
なぜかここで、イタズラ心が湧いてきて、
横から迫ってコロッケパンの残りを食ってやった。
「‥あっ!何すんだよっ!」
ぎろりと俺を睨んでくる、笹崎。
「野菜コロッケ美味いな」
「‥あのなあ」
「まあまあ、これやるから怒るなよ」
鶏のから揚げを、俺がゆっくりと口元に運んでやると、
「‥う」
と、唸りながら笹崎は引きやがった。
「引かないで食ってみろよ。毒なんか入ってないから」
爽やかに笑いかける。
女子には効くんだけど笹崎には効くかどうか。
笹崎は、ためらっていた。
怒ったような顔をしたまま、じっとから揚げを見ている。
まるで、人間からもらう餌に警戒している猫だ。
食べたいけど食べるのが怖いみたいな、そんな感じだ。
って、いつまでそうしているつもりだろう。
「いいから食えっての」
唇にから揚げを乗せると、笹崎はぱくりと頬張った。
「どうだ?美味いだろ?」
「‥うん」
「なんたって俺が作ったんだぜ」
「‥マジで?」
「マジで」
笹崎はゆっくりと咀嚼して、ごくりと飲み込んだ。
感心した表情で、俺が作ってきた弁当を覗き込んでいる。
冷たかった目がやんわりと温かくなった、そんな風に見えた。
『俺にあまり近寄らない方がいい』
心のずっと引っかかった、笹崎の一週間前の台詞。
近寄らないほうがいい理由、
ちょっとでも俺に何か話してくれないだろうか。
心のテリトリーは誰にでもある。
どこまで入っていけるのかは人それぞれだ。
だけど、許されるなら少しでもそこへ入っていって、
笹崎のことを知りたいのは事実だった。
「なあ、ちょっと聞きたいんだけど」
俺が静かに弁当を差し出すと、
笹崎は、厚焼き玉子を手で取って口に放った。
「‥何?」
「近寄るなって台詞、ずっと気になっててさ」
厚焼き玉子の咀嚼が、ぴたりと止まった。
そして、やはりと言うべきか黙ったままで答えがない。
やはり無視キング、か。
いや、そうじゃなかった。
何を考えているかまでは読み取れないけど、
困ったような顔をしている。
じっとその顔を見ていると、こっちを見て目線を合わせた。
濁りのない目に、どきっとする。
でも、それは一瞬のことで、すぐに目を逸らされた。
「‥人が嫌い‥なんだ」
ぽつりと風に飛ばされそうな声で呟いた、笹崎。
それはウソだ、と言いかけて止めた。
人が嫌いだったら俺に喋りかけたりしない。
キャンバスのこと覚えてたり感想なんかを言ったりしない。
鶏のから揚げを食ったりしない。
そして、人が嫌いならそれを人に言うはずがない。
笹崎なりのメッセージだろうけどこれ以上、
追求するのは野暮だろう。
テリトリーに一歩入れただけでも収穫だ。
こういう時にはこれしかない。
「判った。飲もう」
「‥は?」
こいつは何を言ってるんだ、という顔をされた。
「こういう時は飲むべきだ。
飲んで喋って騒いで、とにかく楽しもうぜ」
「‥いや、あの、だから‥俺は人が‥」
笹崎の表情が、頼むから話を聞いてくれ、
という風に変わった。
「大丈夫、奢るから任せておけ。
で、悪いんだけど代わりに頼みがある」
「‥頼みって何?」
とうとう諦め顔になった、笹崎。
「笹崎は呼びにくいから名前で呼ばせてくれよ。
俺のことはジョーって呼んでいいからさ」
ぽかんと口を開けたウツミは、
やがて、大きな溜め息をついて、フライを摘んで食べた。
「‥まあ、いいけど」
「あ!そのフライ楽しみに取っておいたのに!」
「‥俺は好きなもの先に食べるタイプだから」
へへ、とウツミが笑った。
初めて見たウツミの笑った顔に、惹かれるものを感じた。
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