BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 風のように遥かに 2 ]
2010-07-28(Wed) 07:00:05
また声が聞こえた。
「‥こんなとこで、ちょ、やめ‥っ」
これは、あれか。

ひょっとすると、あれだよな。

DVDでしか見たことないようなああいう声だ。

俺は、このまま黙って去ろうとした。
しかし、意思に反した両足が、声のする方へいく。
呆れるくらいバカな俺。
いやいや、これは男子の正常な反応だろう。

ムリヤリ自分を納得させながら、
声が聞こえた貯水槽の方へ行って、静かにハシゴを登る。

そろりと顔を覗かせると、2つの影を捉えた。
2人とも男子で、その影はぴったりと重なっている。
驚く間もなくこんな声が漏れてきた。

「‥ジョー‥こんなの家ですれば‥んっ、もっ」
「しばらく学校ないんだし、もうちょっとだけ」

目線を上げると人物が見えた。
貯水槽に背を預けている、笹崎侑津弥。
ウツミに覆い被さっている、阿久津城。
どちらもクラスメイトである。

俺は、思ったほどショックを受けなかった。

以前、ジョーの家の暗がりのリビングで、
2人がキスをしている姿をぼんやりと見たことがある。
他言するなとジョーが釘刺してきて、
そんなの誰にも言えるわけないと俺は言った。

何をするにも一緒なのは知っていた。
でもそれは仲がいいからだと思っていた。

ジョーとウツミの距離はちょっと異常ではないか、
と、いつだったか、クラスの男子が疑問視していた。
俺から見れば、2人でいることは多いけど、
クラスの誰とでもよく喋ってるし、
定義なんて概念は、人それぞれだと言ってやった。
それでクラスの男子は渋々と納得していた。

クラスの男子の目は節穴じゃなかった。

酔っていた勢いでのキス、ではなかったんだ。

まさか本当にこういう関係だったとは。

生々しいキスの現場は、さすがに俺の目を点にさせた。
汗が、今になって滝のようにどっと出てくる。

「‥も、ジョー、やめ‥んむっ」
いつものウツミらしくない、色気のある声色に、
俺は思わずごくりと喉を鳴らした。

その音が聞こえた、わけはないだろうけど、
しかし、はたっとジョーと目が合ってしまった。

やばい。

びっくりして声が出そうになって口を閉める。
するとジョーは、唇を離すとウツミをぎゅっと抱き締めて、
唇にそっと人差し指をあてた。
まるで、静かにしていろと言わんばかりに。

何とか冷静に戻って、こくりと頷いてみせた。
すると、ジョーも微かに頷いた。

「やめない。もうちょっとだけ」
「‥さっきから、そればっか‥むう、ん、んっ」
何だかんだ言いながら、ジョーのキスを受け入れるウツミ。

2人は、深くキスを交わした。
たぶんジョーが舌を入れたんだろう。
体をびくっと震わせると、ウツミは硬く目を閉じた。

瞬間、ジョーが俺を見てしっしと手を振った。
この隙に行けよ、という意味らしい。
俺はハシゴを降りて、そっと扉のノブに手をかけた。

踊り場に戻って、胸に手を当てると、
激しい鼓動を感じた。

次話へ 前話へ

よくまあ何度もキスを目撃されますな、この2人は‥。
BL小説風のように遥かに | TB:× | CM : 1
風のように遥かに 1HOME風のように遥かに 3

copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi