BLUE BIND
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これは皆様もご存知のはず。
実は私、献血大好きなのです。
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寄付や献血を、行ったり訴えることが、
キレイ事に見えても構いません。
必要としている人がいるのは確かです。
実質的な行動はなくとも、
こういうのがあるということを、
知ってもらえるだけでも嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
[ 青い空を見上げて 9 ]
2010-05-17(Mon) 08:03:16
阿久津城
「お、ジョーじゃん」
店内からの第一声は、友達である義経だった。
義経とは小学校から一緒なのに、
クラスが同じになったのは、去年の、しかも半年だけという、
ちょっと変わった仲だ。
「こら。いらっしゃいませ、だろ?」
呆れながら言うと、義経は、ぺろりと舌を見せた。
「いけね、そうだった」
頭に被っているバンダナを締め直して、ウツミに視線をやった。
「そいつ、今ジョーと同じクラスの?」
「ああ。ウツミってんだ」
「‥どうも」
ぺこりと小さく頭をさげた、ウツミ。
義経は微笑み、ウツミの肩を叩いてから、
「向こうの窓側が空いてるから、そっち座ってくれよ」
と、のれんの奥へ消えていった。
ウツミは、珍しそうに店内を見ていた。
会社の飲み会の団体に、カウンターで独り飲みのリーマンに、
子連れできて食事している家族と、
店内はミニシアターで上映されているヒューマンドラマだ。
途端に、アルコールと料理のいい香りに刺激されたのか、
腹の虫が鳴る。
「ウツミ、あっち行こう」
「‥あ、うん」
歩き出した俺の後を、ウツミがついてくる。
窓側へ行って適当に座ると、ウツミは俺の向かいに腰を下ろした。
そわそわしてて緊張している様子がこれまた面白い。
「さて、どれを頼もうか?」
広げたメニュー表をウツミに見せると、すっと目を逸らされた。
「‥どれでもいい」
「そんなら適当に注文するけど?」
「‥うん」
窓を見る目が、どんよりと沈み始めていた。
ウツミは、生きるための全部を放棄している感じがする。
食べること笑うこと、そして生きることに、
興味はないし価値もない。
出来ることなら放棄してしまいたい、そんな雰囲気だった。
でも俺は何も聞かない。
ウツミが言いたくなるまで待つつもりだ。
メニューを眺めていると、義経が伝票を持ってテーブル脇にきた。
「メニュー決まったか?」
「おう、それじゃあ‥」
ウツミが飲めそうな甘いサワーと、胃を満たしてくれる揚げ物と、
口直しの漬物と、定番である枝豆に、大根サラダに刺身、
それと、白ワインのデカンタとチーズを頼んだ。
「ジョーはいつ成人したんだ?」
「年齢ごまかしてバイトしてる野郎は、どこの誰だっけ?」
笑いながら義経をちらりと見た。
「‥すぐに持ってくる」
注文を繰り返しながら伝票に書き込むと、義経は、
のれんの奥に引っ込んだ。
ここのバイトは18歳からだけど年齢をごまかしている。
これが義経にとっての弱点だ。
知ってるのは俺と、あとは、たぶん3人未満だろうな。
ウツミが不思議そうな表情だった。
「‥あれ、誰?」
「小学校から学校が一緒の吉村義経。和賀高2年3組。
ここで働いてるの知ってて、たまに売上げ貢献してんの、俺」
「‥ふーん」
面白くなさそうに返事をするウツミ。
すると、お通しとドリンクを乗せたトレイを持って、
そそくさと義経がやってきた。
「ヨッシー早いじゃん」
「それで呼ぶな」
義経はこのニックネームが大嫌いだ。
でも反応が面白くて、わざと呼んでからかう俺。
それでも義経は淡々と仕事をこなし、
テーブルにサワーのジョッキと、デカンタを並べていった。
「‥何これ?これに入ってるの酒なのか?」
ウツミは目を大きくさせて、デカンタとサワーを観察している。
その姿はまるで、珍しいものを見つけた猫みたいだった。
「ジョー、しっかりレクチャーしてやれよ」
ウツミの新鮮な反応に義経は微笑みながら、さっと引き上げた。
俺はグラスにワインを注いで、それを持ち上げた。
「まずは乾杯からだろ」
言うとウツミは慌ててジョッキを持った。
「それじゃ、乾杯」
「‥うん」
ジョッキの淵にグラスを合わせて、静かに音を鳴らす。
かこん、と始まりの合図のような音がした。
腹も減ってるし喉も渇いていて、俺はグラスのワインを空けた。
キレイな飲み方ではないが、ここは居酒屋なんだし、
まあいいだろう。
ウツミは恐る恐る、ちびりと口をつけた。
そして、飲めそうだと踏んだらしく、ごくごくと飲んだ。
「どうだ?」
「‥ジュースみたい」
「だろ。でも、アルコールは空きっ腹にくるんだよな。
何でもいいから早く食べたいよな」
と、タイミング良く料理が運ばれてきた。
ここの大根サラダが大好きだ。
大根のしゃきしゃきした食感もいいけど、
自家製ドレッシングが美味い。
ウツミは小皿に醤油をたらして、ひょいとマグロをつまんだ。
マグロが口に合ったのか、ウツミの頬が緩んでいる。
それにしても、空っぽだった胃にアルコールが染みていく。
つまりは、アルコールが回るのが早いということだ。
ウツミも同じようで、サワーが半分残っている状態なのに、
頬を染めながら目が潤ませていた。
その表情がこれがまた可愛い。
同性にむかって可愛いというのは失礼かもしれないが、
ウツミに対してはそう思わずにはいられない。
ほっそりとした首筋はぞくっとするくらい色白いし、
伏せがちな目についた長いまつ毛が、ゆらりと揺れる。
やばい、俺かなり酔ってる。
そういうの見つけるのを止めようとして、
ウツミから目を逸らしたら、俺は慌てたのかこう切り出していた。
「俺さ、他校の野郎と、ケンカしたんだ」
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