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  [ 風のように遥かに 12 ]
2010-08-06(Fri) 21:35:30
「よ、いらっしゃい」
出迎えてくれたジョーの第一声。
ここは、阿久津家。
以前、酔ったウツミをここへ運んだことがある。
その時は夜で、ジョーの家の様子や外装が見えなかったけど、
こうして改めて眺めると、豪邸という単語こそ相応しい。

駐車場には高級車と、バイクが並んであった。
俺の家は、オヤジの車と兄のバイクだけ。
庶民と金持ち、ここまで格差は拡大しているのか。

「遅刻、しかも泥だらけか。
 そのままシャワーに直行してもらうからな」
「あはは。悪い悪い」
ジョーは風呂までを案内してくれた。

部活がちょっくら長引いてしまった。
約束していた時間をとっくに経過してしまい、
シャワーをスルーし泥のついたTシャツと短パンで、
ここまで急いできた、その結果がこの有様だ。

磨かれた廊下を汚さぬよう、俺はそうっと歩く。
そろりそろりと、これから暗殺でもする忍者のように。

案内された場所は、キレイな脱衣所だった。
「泊まるって言ってたよな。それなら着替えあるだろ?」
「そこら辺は持ってきた」
「よし。タオルだけ持ってくるから、
 シャンプーでも何でも使ってさっぱりしてこい」

ジョーは頭をかきながら去った。
それを見届けて、シャツと短パンを脱ぎ、奥の風呂に入る。
風呂は広く豪華で、テレビが壁に埋め込まれている。

羨みながらシャワーを浴びていると、ジョーが戻ってきた。
「おい、ここにタオル置くからな」
「サンキュ」
いい香りがするシャンプーを流して、礼を言う。

「マキが話したいなんて珍しいな。何だよ話って?」
ジョーが扉に寄りかかる姿が見えた。

「ここで言うのか」
「ウツミが聞いててもいいなら後にするけど?」
「それなら後にする」
「ふうん。てっきり、男同士のセックスの方法でも、
 知りたいのかと思ったんだけどな」

オブラートに包むということを知らないのか、
はたまたジョーには恥じらいがないのか。
ストレートな言葉にこっちが赤面しそうになる。

「それ以前の問題だし」
「とにかく早く上がってこい。俺もウツミも腹ペコだから」
「あいよ」
ジョーが出て行く音がした。

勝手にボディソープも拝借し、全身を磨いてから風呂を出る。
持ってきた替えのシャツを着て、ようやく一息ついた。
明日の練習は、監督の都合により練習は午後のみ。
だから、今日はここに一泊するつもりで、着替えを持参した。

脱衣所を出て廊下に立つ。
あまりの広さにどこへ行けばいいか判らずにいると、
「‥あ。マキこっち」
と、今度はウツミが出迎えてくれた。

ウツミは、ダイニングへ案内してくれた。
前を歩くウツミのスリッパが音を鳴らしている。
ぺたんぺたんと、愉快でウツミらしい音色だ。

俺はウツミと並んで歩けなかった。
ウツミの顔を見ると、あのシーンを思い出してしまう。

タオルで髪を拭きながらウツミの斜め後についていくと、
リビングに到着した。
その空間はダイニングとキッチンが隣接され、
ここだけで何坪あるんだ、と思うほどの広さだった。
ドラマのセットかよ、と言いたい気分さえも萎えてくる。
そのダイニングテーブルに料理がセットされてあった。

「お、きたか。それじゃあごはんにするか」
ピンク色のエプロンを取るジョーは、まるで若奥様のようだ。

「これ、デリバリで注文したのか?」
「‥ううん。全部ジョーの手作り」
テーブルを見ながら訊ねると、ウツミが座りながら教えてくれた。
しかも、それが当然かのような返答だった。

料理は全て中華だ。
餡かけチャーハンに始まり、わかめと卵のスープに、
回鍋肉、小龍包、それからテレビでしか見たことがなくて、
名称が判らないような魚料理も並んでいる。
疲れた体に、コテコテの油料理は大歓迎だった。

「マジか。どんだけだ。何でも作れんのか?」
「‥ピザとかうどんなら、ジョーは生地作るよ」
「ほらほら、いいから食おうぜ」

ジョーが腹を押さえながらウツミの隣に座った。
俺の席は、ジョーの向かいに置かれた箸のとこらしい。

「いただきます」
3人で手を合わせ、俺達は皿をキレイに平らげていった。

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ぐだぐだな展開ですみませ‥(土下座)
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