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  [ 風のように遥かに 14 ]
2010-08-10(Tue) 04:30:48
「‥ミナミ先輩?」
「ほら、体育祭の後の勧誘で、
 ウツミのこと助けてくれたじゃん」
ジョーがウツミに簡単に説明してくれた。
「‥思い出した。メガネした優しそうな人だ」
呟きながらウツミはグラスを空にした。
からん、と氷の澄んだ音が鳴る。

ウツミから取り上げたグラスの氷を食べながら、
ジョーは新しい焼酎割りを作りに、キッチンへ行った。
「で、告白するかしないかの相談か?」
「今はそれを悩んでる。でもだめなのは判ってるんだ」
「どうして?三波、誰かと付き合ってる?」

レモン酢割りと、黒ビールを持ってきたジョーが、
ソファに座ったのを確かめてから、
以前、花束を持っていた先輩の話をした。

去年の真夏、たぶん今頃だろうか。
花束を手に歩く先輩を、目撃した経緯がある。
その時の先輩の顔は、とても真剣だった。
まるで、女性にこれから告白をするかのような。

先輩に声をかけようと思ったけど、
それすら許されないような、そんな雰囲気があった。

それについて聞いたことはないけど、
好きな人へのプレゼントに違いないと思っている。

「それだけかよ。裏をちゃんと取れっての」
ジョーが呆れたように言った。

「裏なんか取れるか。ってかどうやるんだよ。
 好きな人いますか、とか、あの花は誰にですか、とか、
 そんなの聞いたら気があるのが、バレバレじゃん」

ビールを飲み干して溜め息をつくと、
ジョーは足を組み直しながら、やれやれと言った。
「バレバレってか、たぶんバレてるだろ。
 三波はあれで意外と敏感だしさ」

そうだ、たぶんバレてる。
ジョーのこの一言で俺は確信してしまった。

ついでに、アイスの件を打ち明けると、
ジョーは疲れたように答えた。
「手についたアイスを舐めたりするかよ、普通」
「そうだよな、やっぱり普通じゃないよな」

だって、しょうがない。
好きな人に触れたい、思ったらもう止まらなかった。

「まあ、ウツミにならやっちゃうけどな、俺」
「‥マキの前でそういうこと言うな」
笑うジョーを睨むウツミ。

「とにかくさ、もうとっくに三波にはバレてるって。
 あとは砕けるか、このままでいるかだな」
「ジョーは告白してから後悔しなかったか?
 砕けるとかうまくいくとか考えてた?」
「そこまで深く考えなかったな。
 いつの間に言っちゃった、みたいな感じだったし」

ビールを飲み終えたジョーは、
レモン酢割りのグラスを2個持ってきて、
1個を飲みながらもう1個を俺にくれた。

「そういう感じで言えるかな‥俺‥」
誰に対してでもなく自分への問い掛けだった。
これについては誰も何も言えるはずがない。
それが未来なんだから。

「さあな。エネルギーとタイミングと、ノリ?」
ジョーが俺をからかうように笑うと、
ウツミが少しむっと顔をしかめた。

「‥ノリかよ、あれ」
「あ、いや、違う違う。あれはノリじゃないから。
 ほら、マキの場合はって意味だって」
珍しく慌てるジョー。
かなりレアな姿ではないだろうか。

「‥ふうん」
ジョーの言い訳も虚しく、ウツミは唇を尖らせて、
とうとう不貞腐れてしまった。

「違うって言ってんのに信じらんない?」
ウツミの唇を撫でると、そこへジョーが唇を寄せていった。

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