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  [ 風のように遥かに 15 ]
2010-08-10(Tue) 07:30:22
俺がうろたえる前に、ジョーの頬をウツミが掴む。
「‥マキの前だっての」
「あ、や、うん、アメリカンジョークだから」
どこがアメリカンジョークだ、と俺とウツミは呆れた。
ジョークの下りで余計に怒ったらしく、
むぎゅっと頬を引っ張りながら、ウツミが腹黒そうに微笑む。
「‥もうするなよ?」
「はい」

ほんのりとした暖かさを感じる、そんな光景だった。
考えてみればノーマルなカップルとの差はほとんどない。
異性同士か、同性同士か、それが違うだけで、
相手を思う気持ちは、どれも同じなんだ。

「どうした?アメリカンジョークに受けたのか?」
にしし、と子供っぽい笑顔になるジョーに、
そんなわけないだろ、ったくどうしようもないんだから、
と言いたげな表情で笑ったウツミに、俺は笑い返す。

すると、ウツミは目を少しマジにして、
グラスの氷を揺らしながら、ゆっくり喋り始めた。

「‥好きになった気持ちはひっくり返せないよ。
 同性も年上も、そんなの関係ない。
 でも、判ってても何もしないのは、
 何もほしくないのと同じなんじゃないかな」

からんころんと、氷が踊る。
静寂に包まれた部屋に、その音だけが響いた。

「‥好きなら求める、これが普通だろ。
 俺は求めて手に入れた。ジョーのことを」
真剣な眼差しで、ウツミは隣のジョーを見つめる。

そのウツミの思いに応えるように、ジョーが付け加えた。
「マキがどうしようとも、応援してるからな俺達」

ウツミにグラスを渡しておかわりを頼んだジョー。
キッチンへ向かいつつ、ウツミは俺を見て笑った。
応援してくれている笑顔に、頷いて返した。

ウツミの後姿に微笑みながら、目の赤いジョーが息を吐く。
そんなに酔ったなら、おかわりやめて水飲めばいいのに。
って、俺もビールと焼酎を飲んだから、
それなりに酔いが回ってるかも。

グラスを持ったウツミが戻ってきた。
そして、なぜかコントのように、グラスを持つ手を滑らせ、
ウツミはテーブルと足に中身を零してしまった。

「‥ごめん」
布きんでテーブルを拭くジョーは、
「こっちやっとくから、シャワーして着替えてくれば?」
と言いウツミはそれに従った。

ジョーはテーブル、俺はフローリングを拭く。
焼酎の大半は、ウツミのジーンズに零れたみたいで、
こっちの被害は最小限だった。

「さてと」
ジョーは拭き終えると、企み顔ですたっと立ち上がった。
懲りずにまだ飲むのかと思い、ジョーに忠告する。

「そろそろ飲むのやめて水にすれば?」
「いやもう俺飲まないし」
「じゃあ何だよ、さてとって」
「俺もこれからシャワー浴びようかなってさ」

一瞬、言っている意味が判らなかった。
「シャワーは今ウツミ使ってんじゃん」
「だからだろ。マキはまあ適当にくつろいでて」

言うが早いか、ふらついた足取りでジョーは風呂へいった。
なるほど、アルコールで気持ちよくなったから、
そのテンションを保ちつつウツミを襲いたくなった、
ということか。

ったく、堂々と言ってから風呂に向かうなっての。

触れられる肌のない俺は、テレビを付けた。
深夜の通販の番組に、こんなのいらないだろ、
なんて文句言いながら、重くなった瞼をそっと閉じた。

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そのうちお風呂シーンを番外にするかもしれません‥(苦笑)
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