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  [ 風のように遥かに 16 ]
2010-08-11(Wed) 05:30:34
ふと目を覚ますと、俺はソファに寝ていた。
脇のソファに目をやると、
ジョーとウツミが寄り添いながら目を閉じている。
しかも、ウツミの首にキスマークが付けられていて、
「‥ふん」
と、悔しくて鼻息を荒くした。

2人を起こさないように部屋を出て、シャワーを借りる。
ふと見た洗濯機の上には、
泥まみれだった俺のシャツが置かれてあった。
どうやらジョーが洗って畳んでくれたらしい。

シャワーを済ましてキッチンへ向かうと、
ダイニングテーブルに一人分の朝食が用意されてあった。
ついでにメモも置かれてある。

「食ってから行け、か」
声にして読むと、ジョーらしさが伝わってきて笑った。

ありがたく朝食をとった。
食べ終えた器は洗わず、そのまま静かにシンクへ置く。
たぶん、俺が洗ってもまた洗い直すんじゃないか、
と余計なことだけどそう判断したからだ。

この時点で10時半。
時間が半端で、ここにいても家に帰ってもやることがない。
むしろ、ここにいると、ウツミの首が気になるだけだ。

だったら自主練でもするか、とさっさと学校へいった。
グラウンドをランニングしていたら、すぐに午後になり、
いつものように練習が始まって6時に終わった。

そして、やはりシャワーを使うのがビリになってしまい、
部室にはミナミ先輩だけが、ぽつんと残っていた。
クリップボード上にペンを滑らせている、真剣な顔の先輩。

「ミナミ先輩帰らないんすか?」
「練習の記録、もうちょっと書いてから帰るつもりだよ」
だから、待たないで帰ってね、
というニュアンスが含まれているような気がした。

練習中は表面上、俺もミナミ先輩もいつも通りだった。
だけど、先輩はこれまでにないほどよそよそしい態度だった。
好意を確信し、それでいてどう接していいか迷っている、
そんな感じに見えた。

先輩を見ているだけで気持ちが溢れてくる。

邪念が限界で、後から先輩を抱いた。

俺は、言わない辛さより、求めて砕ける辛さを選んだ。

ミナミ先輩が俺の腕中にいる。
先輩は華奢で、だけど暖かくて柔らかく、
このまま離したくないとさえ思った。

「マキ?どうしたの?」
クリップボードを持ったまま、微動だにしない先輩。

「俺、ミナミ先輩のこと大好きです」

とうとう言ってしまった。

極限に緊張し、胸が痛くなり、息が荒くなり、
しかも、体がかたかたと震えていた。
そういうの全てが先輩へと伝わってしまう。
なるべく悟られないようにしたいと思っていても、
初告白の達成に、どうしても平静を維持できない。

すると、ミナミ先輩は苦笑いして、こう言った。
「バカなこと言ってないでもう帰りなよ。ね?」

俺は惨めになって腹が立った。

こっちは粉砕覚悟だった。
それなのに先輩は返事をしてくれず、
しかも、なかったことにしようとしている。

それが許せなくて、俺は。

先輩の顔を両手で包み、キスをした。

これでちょっとは動揺すればいいんだ。
そして、受け入れるか弾き飛ばすか、
どっちかで意思表示をしてほしかった。

ずっと、先輩とのキスを想像してきた。
でも、こんなシチュエーションを望んでなんかいない。
もっと甘い空気に包まれて、キスをしたかった。

俺からキスしたのに、悲しくなってきて。

そっと顔を離すと、先輩はやっぱり動揺しておらず、
それどころか落ち着いていた。
こういう反応されるとは想像もしなかった。

自分がどうしたくて、先輩にどうしてほしいのか、
さっぱり判らなくなった。

「あの‥俺‥」
言葉が続かないし、先輩を見られない。

好きだとまた言いたいのか。
返事を言ってほしいとお願いしたいのか。
それとも、キスについて謝りたいのか。
色んな考えが、ぐるぐると頭の中で回っている。

沈黙する部室で、ミナミ先輩が正面で背伸びをすると、
ちゅっとキスをし、そして唇を深く重ねてきた。
驚く間もなくそこへするりと舌が入ってくる。

舌が弄ばれて息が苦しくなり、はあっと息を吐いて唇を離すと、
先輩が、じっと見つめながらこう呟いた。

「僕と、どうしたいの?」

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