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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 風のように遥かに 22 ]
2010-08-17(Tue) 15:35:05
あの出来事から1週間。
先輩と何となく距離を置いていた。
部活中、顔は合わせるけど目を合わせることはない。
それでも、サッカーの練習は一通りできていた。
とりあえず俺にできるのは、現状維持。
悪くなりようがないとこまで陥ったんだから、
あとは、良くなるのを待つばかりだ。

忘れたいのに、嫌いになりたいのに、
前よりもっと好きになってる。
俺、こんなに未練がましい性格だったっけ。

きっぱりとふられたなら、俺だって諦められる。
でも、あんなことしてからふられたら、
意味が判らないし納得が行かない。
それに、先輩、終わってから泣いていた。

何でどうしてと疑問ばかり浮かんできて。

あれから食欲も睡眠時間も激減してしまい、
4日目には5キロ減った。
減ったと言うより、やつれたに近いみたいで、
家族に驚かれてやっと危機感を覚えた。

タツ先輩には、痩せるなと怒られた。
リュウ先輩から、ラーメンを奢ってやると誘われたけど、
食べたい気分じゃなくて丁寧に断った。

コンディション管理の重要性は承知しているのに、
それができていないと俺を咎めたりすることもなく、
両先輩はひたすら心配してくれている。
その心遣いに、泣きそうになる俺がいた。

結局、今はこのままでいくしかないと思う。
そう言い聞かせ、食事も睡眠も、ムリにとった。
答えのない悩みごとは疲れるから、
1人の時間は、友達にメールしたり電話かけたりして、
考えない時間を作るようにした。

もしまた女子に告白されたら、その子と付き合うか。
なんてことまで考えられるようになった、今日の早朝。

「今日、三波は休部だ」
俺にそう言ったのは、タツ先輩。
マネージャーの代わりに早くやってきたらしく、
部室には2人きりだった。

「そうっすか。珍しいっすね」
「三波からマキに伝言があるぞ」
「え?」

驚いて振り返ると、先輩は顎を引いて腕を組んだ。
「好きな人に会いにいく、だそうだ」

なんだ、それ。

わざわざタツ先輩に伝言することか。

「そ‥っすか‥」
「いいのか?」
「何が‥ですか‥」
「何を示しているメッセージなのか俺は判らんが、
 三波なりのマキへの伝言なんだろう?」

先輩が、ぽんと俺の肩を叩いた。
「腹痛になるなら監督がこないうちだぞ?」

笑顔のタツ先輩。
この場面でのそういう笑顔は、マジで卑怯だろう。

「あの‥俺‥」
じわりと溢れてきた涙をぐいっと拭った。

「何だ?」
「腹が痛いみたいで‥家に帰っていいっすか‥」
「腹痛くらいで休部とはたるんどるな。
 まあ、その代わり、復活したら練習メニュー2倍だ」
「‥はいっす」

タツ先輩に勢い良く一礼して、
俺は自己最速のスピードで自転車を飛ばす。
目的地は、ミナミ先輩の自宅だった。

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