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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ その雪景色窓辺より 5 ]
2010-09-11(Sat) 05:30:03
このスキー場はナイターをしない。
あるところも嫌いじゃないけど、
俺としては疲れるからそこまで滑りはしない。
そういうわけで、空が赤くなってきて宿へ戻った。

ペンションの駐車場から直接行くことができる、
1階奥の乾燥室へ、雪を払ったボードとブーツを運び込む。
それらを壁に立てかけて、ウェアの上も吊るした。

ふう、と息を吐いてストーブに手を当てる。
寒いのは嫌い、でもスノボはやりたい、
だけどやはり体は冷えるわけで、ストーブに癒される。
灯油の燃える匂いが、懐かしさを漂わせた。

直後、恐ろしい事件が起こった。

「赤石、ごはんの前に一緒に風呂に入ろうよ」
驚くことに青柳に風呂に誘われたのだ。

夢じゃないか確かめるのに、頬を強く抓る。
激痛だったけど現実のままだから、これは夢ではない。

とうとう俺にも春がきたのか。
いや、そんなはずはない。
人生なんてそうそう都合よくいくはずがない。

そんな気持ちとは裏腹に、頬が緩む。
警戒心以外、顔と頭は、バカ正直らしい。

「どうしたの?イヤだった?」
青柳が、ぴょこんと顔を覗き込んできた。
俺のそんな脳内の格闘を知りもしない、純粋な直視に、
あははと苦笑いした。

ここで喜んで返事すると怪しまれる、
と思い、渋々っぽくオーケーの返事をした。
「ん、まあ、イヤじゃないし別にいいけど」

気になった青柳の反応は見なかった。
確かめるのが怖い、と思うなんて俺らしくないけど、
心にはそういう臆病な部分が残っているらしい。

ペンションの男湯は5人くらいなら一度に利用できる。
湯気の立ちこめる風呂に入り、
青柳の細くてしなやかな裸体を拝みながら、
ざばざばと頭と体を洗いまくる。

ここの湯船はいつも熱湯だった。
いや、熱いのは構わない。
問題なのは熱さゆえの湯気である。
これまでは気にしたことがない、大量の湯気が、
青柳のありとあらゆる部分を、もうもうと隠していた。

友人と泊まりにきて風呂に入っても、
喋ったり遊んだりで、こういう気持ちにはならない。
だから湯気の存在なんて、あるようで無かった。

でも俺は諦めない。
見える部分を捉えて、それも目に焼き付ける。

肩まで湯船に浸かり、熱い湯でしっかりと足を揉んでいると、
すすっと青柳が接近してきた。
これが透明の風呂なら、凝視できるいい機会なんだが、
風呂は温泉湯で、今ばかりは乳白色が恨めしい。

「スノボで足痛めたの?」
「まさか。こうやって熱い湯で揉んでやると、
 足の疲れとか持ち越さないんだ。そゆの知らない?」
「知らなかった。赤石って物知りだね。僕もやろうっと」

どうせなら俺が青柳を揉んでやりたい。
そんな甘い夢を見ながらせっせと足を揉みまくった。

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赤石、なんだかとても必死なのにノリはコミカルです‥(^^;)
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