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  [ その雪景色窓辺より 12 ]
2010-09-18(Sat) 05:40:08
4月の春暖。
送迎会をした翌日も新人研修のため出勤だ。
飲みすぎた思いつつ、スーツで待機室へいくと、
本日のパトがそこに勢揃いしている。
珍しくバイトのメンバーが多い。
それもそのはず送迎会に出た大半のメンバーは、
初めから今日の有給を取っていた、ということだ。
新人なんかの研修がなければ、俺だって休みたい。

飲みすぎたせいか足がまだふらついていた。
歳を取るごとに酒に弱くなっている。
昔はビール1ケース飲んでオールしても、
けろっとしていられたのに。
歳ってこうやって取っていくんだな、と改めて感じた。

待機室は、テーブルとイスが置かれていて、
ごはんを食べてる人、コーヒー飲んでいる人、
マンガを読んでいる人と、みんなが寛いでいる。

ここは、ロッカー室と仮眠室に繋がっており、
挨拶をしてから着替えをし、空いているイスに座って、
みんなと雑談していると、ノブさんがやってきた。

どうやら、パトの隊長がトラブル対応中らしく、
代わりにここへ新人を連れてきたらしい。

全員、挨拶のために起立する。
ノブさんが手招きすると、俺達の前に新人が立った。
瞬間、まさかの展開に俺は一驚してしまった。

「今日から勤務する青柳です。宜しくお願いします」

思わぬ再会に言葉を失った。

どうして、ここにカズがいるんだ。

隊員1人ずつ自己紹介した。
もちろん俺もしたけど、声がちょっと震えていたと思う。
それくらいカズを見た時からすでに体も震えていた。

一方、カズは普通の態度だった。
俺を見ても表情も顔色も何も変わらず、
それどころか、ノブさんの話を熱心に聞いている。
それらが終わった頃、パト開始の時間となり、
続々とみんなが出発していった。

そんな中ノブさんが、カズを俺の前に連れてきた。
「青柳君、研修してくれる赤石君です」
「宜しくお願いします」
俺のことなんか忘れたかのように、カズが一礼する。

もしかしてドッペルゲンガーか。
はたまた、同姓同名の、同じ顔の男か。
いや、どっちも現実的ではない。
間違いなくカズのはずなのにあまりにも無反応で、
俺はとても悲しかった。

「じゃあ頼むな、ヒロ」
俺の肩をぱんぱんと強く叩いたノブさんは、
笑いながら待機室を出ていった。

ぽつんと、その場に俺とカズだけが取り残される。
非常にやりにくい空気だけど、
仕事としてカズを研修しないといけない。

悲しみを通り越した俺は、むかむかしつつあったが、
拳を握り締めて気を取り直した。
「まずはこれから警備服合わせをします。
 ロッカー室までついてきて下さい」

後についてロッカー室へきたカズに、
空になったばかりのロッカーを開けて、鍵を渡す。

「ここがロッカーです。名札はあとで用意します。
 鍵は、紛失すると有償となります」
「はい」
「次にこれから警備服を着てもらいます。
 サイズはいくつですか?」

ロッカーの上にあるダンボールを取り、
制服のサイズを確認していると突然、カズが笑い出した。

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