BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ その雪景色窓辺より 19 ]
2010-09-24(Fri) 16:35:21
6月の梅雨。
海以来、カズとの進展はない。
あるとしたら下の名前で呼ぶようになったのと、
関係が同僚から友人へ、たぶんランクアップした、
それくらいだろうか。
最近、スノボとツーリングでの、
あの行為の共通点を発見した。
それはカズの言葉にヒントがあった。

酔った勢い、すなわち酒である。

またカズとしたいなら、飲みへと誘えばいい。
だけど、それだとあからさますぎるし、
酔ったからってまたできるとも限らない。

誰かが俺とカズのこと飲みに誘ってくれないかな、
なんて、そんな都合よくいったら苦労はしない。

そんな時だった。

「来週、頼むから合コンきてくれ!」

片思いのもやもやをどこかに吐露したくて、
彼氏を持っている友人を誘い、
ゲイが集まるショットバーでグラスを傾けると、
友人がそう発言した。

友人もとい悪友のこいつは、佐伯豪。
大学時代の、一緒に良いことも悪いこともした仲間で、
営業マンとして大手文具店に勤務している。
そして上司の彼氏がいる、とても羨ましい男だ。

ゲイバーで合コンに誘うなんて、何事か。
あまりにも場違いすぎる発言に、
俺は思わずグラスを床へ落としそうになった。

「はあ?何言ってんだよ。彼氏はどうしたんだ。
 こっちの話も聞かないで、さっきまでノロケていただろ」
「いや、実はこんな話があって…」

豪には、ミックスバーで意気投合したビアンがいる。
その人が同僚にビアン疑惑を持たれ、
カモフラージュのため合コンをセッティングしてほしい、
とどうしても頼むと豪へと泣きついたらしい。

以前、豪も同じことがありその人に助けられたみたいで、
そういう経緯から無下にできない、とのこと。

そして豪は会社の同期に声をかけた。
結果、2人確保したがどちらも参加不可になったらしい。
1人は当日に出張、1人は最近になり彼女ができ、
もちろん合コンへは行けない、ということだ。

「ヒロ頼むから、もうあと1人連れてきてくれ。
 飲み代は、もちろん俺負担するからさ」
「おごりなら俺が行っていいか?」

カウンターから横槍をいれてきたのは、
ここのショットバーグリーンアイランドの、
バーテン兼マスター、緑川さんである。
緑川純司、というのがフルネームだ。

緑川さんは、プロレスラーかと思うほどごつい。
体が縦よりも横に大きくて、肌も黒く、
服を着ていてもムキムキなのが見て判るほどだ。
噂によればこの風貌で受けタイプらしい。

「緑川さんが20代だったら、とっくに頼んでるよ」
「40代じゃだめか」
「残念だけど先方がそういう要望だからさ」
「まあ、ジョークで言ってみただけだ」
「言われなくても知ってる」

にしし、と笑った緑川さんと豪。
双方、いたずらを思いついた子供のような顔をしている。

俺はその光景を眺めながら、タバコを揉み消すと、
誘うならカズしかいないだろうと考えていた。

次話へ 前話へ
BL小説その雪景色窓辺より | TB:× | CM : 0
その雪景色窓辺より 18(R18)HOMEその雪景色窓辺より 20

COMMENT

COMMENT POST

:
:
:
:



 
 管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2024 BLUE BIND. All Rights Reserved.
  
Item + Template by odaikomachi