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BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ その雪景色窓辺より 21 ]
2010-09-28(Tue) 04:25:16
カズのトイレが済んでからタクシーを拾い、
家の近くのコンビニ前で降りて、
酒やつまみを買ってから、家までカズと歩いた。
たいして広くはない、ありふれた賃貸マンションに到着。
靴を脱ぎ家に入り、シーリングライトをつけると、
テーブルの上にたくさんのごみが散らかっており、
俺は情けなくなって頭を掻いた。

「すぐに片付けるから適当にすごして」
「片付けるなら手伝うよ?」
「いや、いい。すぐに終わるから」

とりあえずテレビをつけて、俺はテーブルを片した。
こういう時このだらしなさを呪ってしまう。
まあ、呪うくらいなら普段からやっとけって話か。

ついでに酒を冷蔵庫へ入れたり、
床に置いているものをクローゼットの中へ入れたり、
吸殻が山盛りになった灰皿を片付けたりして、
しばらく拭いていないテーブルをキレイに拭いた。

ぐるりと部屋を見回すカズから、
ジャケットとネクタイを貰ってハンガーに吊るす。
ついでに俺のも吊るすと、カズが呟くように聞いてきた。

「ヒロはどこで寝ているの?布団?」
「ロフト。風呂とトイレの上部分がロフトなんだ」

ほら、とロフトを見ると、カズは納得した表情になった。
マンション自体がファミリー指向なのか、
ロフトと言いつつも中2階のような作りになっていて、
優にキングサイズのベッドほどの広さがある。

「カズお待たせ」
ようやく片したテーブルに買ってきたものを並べ、
俺達はビールで乾杯した。

喋りながらしばらく飲んでいると、
BGMの代わりにスイッチを入れていたテレビで、
サイエンス番組の後にネイチャー特集が流れた。
山とか川とか、そこで生きる小動物とかが映っている。

「山か。夏にいったら涼しそうだな」
ここ数年雪山だけで、旅行そのものに程遠かったせいか、
俺はついそう口にしていた。

「だったら、山にツーリング行こうよ」
休憩入れても4時間あれば、近場でいいなら山着くよ、
とカズが教えてくれた。
カズもよく山へ行くらしく、ロープウェイで頂上までいって、
景色を堪能し、それから温泉に入り帰宅するという。

誘ってもらえたのは嬉しいけど、
それだとカズにばかり負担をかけることになる、
と考えてこんなことを言った。

「それなら、プランとか俺考えていい?」
「いいよ。涼しみたいなら8月に行くのがいいかも」
「了解。海の次は山か。すごい楽しみ」

吸っていたタバコを消しながらそう言うと、
視界の隅にカズの笑顔が見えた。

カズは俺のことどう思ってんだろう。
俺がイヤではないのは判るし、
イヤではないからあの行為の相手になってるんだろうけど、
こういう関係ってどういう名称になるんだ。

やっぱセフレか、それとも友達以上恋人未満てやつか。
なんだかそれって一昔前のキャッチフレーズだな。

「ねえ、ヒロ」
「何?あ、酒だったら冷蔵庫に冷やしてるよ」

新しいタバコを銜えながら立つと、
カズに強く手首を掴まれた。

掴まれた部分が熱すぎて。

どくんと胸が跳ねて振り向けなかった。

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