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  [ その雪景色窓辺より 29 ]
2010-10-05(Tue) 03:50:05
朝、目が覚めると腰は痛いものの、
汗のべたつきはなく体がさっぱりしていた。
シャワーを浴びた後のカズが、
全身をくまなく清拭してくれたんだろう。
隣にはカズがまだ寝ていた。
そう言えば俺、いつもカズの先に起きているな。
カズの寝顔を堪能できて、まあいいんだけど。

水を飲んでカズの顔を眺めていると、
少ししてからカズが起きた。
体を伸ばしてから俺に笑うカズ。

「おはよう、ヒロ」
「おはよ。体ありがと。汗さっぱりした」
「あ、判ったんだ」
あはは、とカズが照れ笑いをした。

心に温かいものが湧き上がる。
この笑顔が大好きだ。
カズを独り占めしたい、俺だけの物にしたい。

ごくり、と水を飲んで口を開いた。

「なあ、カズ」
「何?」
「俺、カズのこと‥」

瞬間、携帯の着メロが響いた。

これは俺じゃなくてカズの着メロだ。
海へツーリングしにいった時、
カズがバイクで流していた曲のひとつだった。

カズは携帯を無視して、俺をじっと見ている。
「カズの携帯鳴ってる」
「いいよ無視して」
「いや、でも、なんか俺が気になる。
 メールじゃなくて電話だし急用とかじゃないの?」

カズは少し唇を尖らすと、ロフトを降りていき、
背広の内ポケットの携帯に出る。
途端にカズは怪訝そうな表情になった。

「どうしてこの番号知ってるんですか‥?」

番号を知らせていない人物の声だったらしく、
カズの空気がぴりっと緊張する。
通話相手に対し警戒心丸出し、という感じだった。

「そうですか。それで何の用ですか。
 今からそっちに来てほしい?
 ってこっちはもう関係ありませんから」

来てほしいと言われたらしく、
カズらしからぬ苛立った口調になっていた。
いらつきからか、カズの声のトーンがやけに低い。

そのカズが、何度もロフトを見上げる。
俺はいいから行ってくれば、と口パクで伝えると、
カズは困った顔になった。

もちろん、俺だってカズに傍にいてほしいし、
まったりとするこのムードで、好きだって伝えたかった。
だけど、それなりに急用あっての電話だろうし、
やっぱり、なんか俺が気になる。

カズは目を閉じながら溜め息をついて、
怪訝な表情をしたまま了解の返事をすると、
相手は納得したらしくようやく通話が終了した。

ばちん、と携帯を折り畳む擬音で、
少し怒っているのが俺に伝わってくる。
そのカズは、強く息をついてから俺を見た。
「ヒロごめん。ちょっと行ってくる」

ロフトを乗り出してカズへ服を渡す。
「うん、はいこれ」
「ありがとう」
手を伸ばして受け取ると、カズは着替えを開始した。

いいさいいさ、これくらい構わないさ。
用事はすぐだろうけど告白はいつでもできから。

スーツに腕を通してから、
カズはバッグを手にしてこう言った。
「夜、うちにこない?」
「え?何で?」

俺達は2連休とっていて仕事は明日夜からだった。
だから、行くのは構わないけど、
また夜に会って、カズはどうしたいんだろう。

「話の続き、うちで聞きたいんだ」
「‥ん、判った。いってらっしゃい」

告白しようとしたことをカズに見抜かれていた。
俺は恥ずかしがりつつカズに手を降ると、
カズは手を振り返して、静かに部屋を後にした。

ばれてるなんて恥ずかしすぎるな、ちくしょう。

俺は頭を掻き、ゆっくり体を起こした。
とりあえず気を取り直して、朝ごはんでも食べるか。

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