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  [ その雪景色窓辺より 33 ]
2010-10-08(Fri) 16:00:18
8月の真夏。
来週と言えどもカレンダーでは8月に入っていた。
当日昼前、カズがバイクで家の前へとやってきた。
バルコニーから姿を確かめてマンションの外へ出ると、
むすっと口を曲げたカズが、俺にメットを渡す。
それを被ってからバイクに跨ると、
マフラーを少し吹かしてからバイクが走り出した。

カズの運転はこれまでより乱暴だった。
安全なことは安全なんだけど、少し違う。
苛立ちがそのままテクニックに反映されているような、
そんな気がした。

メットのインカムのスイッチがオフにされていて、
カズと喋るということが全くない。
聞こえるのはバイクのオーディオからの歌だけだった。
そうだ、確かこれがカズの着メロになっている。

それを聞いているとバイクが停まった。
到着した場所は、メディアでよく見るショッピングモール。

バイクを駐車して、モール内を歩いていると、
カズが黙ったままカフェに入った。
座った窓側の席から、室内にある噴水広場が見渡せる。

「とりあえずランチにしようか」
と、カズは俺にメニューを渡してきた。
それから、真剣な表情で、どこかへメールする。

カズはオーダーが決まっていたみたいで、
俺がメニューを畳むと、店員を呼んで注文を告げた。
ここへは何度もきている、そんな慣れた感じがする。

運ばれてきたランチを平らげ、
セットのコーヒーを飲みながらタバコを吸っていると、
そこに人がやってきた。

カズに抱き付いていた、あの女だった。

ロングのウェーブヘアが、ふわりと風に揺れて、
ここにまでいい香りが漂ってくる。
いかにも女性らしくて、守ってあげたくなる感じだ。
カズはこういう女がタイプらしい。

かっと頭に血が上った。
これは何なんだ、カズは俺に何をしたい。

これから元上司の妊娠報告でもするつもりか。
そんなのいらないっつーの。
女に向かってタバコの煙を吐いてやろうか、
と女をぎろりと睨んだら、ぺこりと一礼された。

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