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  [ その雪景色窓辺より 34 ]
2010-10-09(Sat) 04:20:30
「こんにちは。青柳蜜葉です。
 かなり待ったかしら。ごめんなさいね」
一瞬、言われたことが判らなかった。

青柳ってカズの苗字だよな。

どうやら、この人はカズの姉らしく、
俺は思わずぼかんと口を開けてしまった。

カズが隣のイスを引いて、座るよう蜜葉さんを促すと、
柔らかそうな髪をなびかせ、蜜葉さんは微笑んだ。
「遅れてごめんねカズ君」
「仕事だったんだし仕方ないよ」

はっと我に戻って、慌ててタバコを消す。
ありがとう、と蜜葉さんにまた一礼され、
俺は慌てて手を振った。

「それで、旦那さんと仲直りしたの?」
「うん。あれからすぐにね、ちゃんと仲直りしたよ。
 妊娠くらいで混乱するなんて、ダメダメだね。
 いきなり押しかけてごめんね」

自分の頭をこつんと右手で叩いてから、
蜜葉さんはオレンジジュースを注文した。
こうして見ているとカズによく似ている。
安心させられる雰囲気というか空気みたいなものが、
そっくりな2人だった。

「本当だよ。旦那さんからの電話にはびっくりした。
 僕、みっちゃんの旦那さんに携帯教えてないからさ」
呆れたように言いながら、冷めたコーヒーを啜るカズ。

運ばれてきたジュースを飲んで、蜜葉さんが苦笑いした。
「私がね、いつもカズ君を頼っていたから、
 旦那もついついこの事態をどうにかしてくれる、
 って思ってヘルプ出したみたい」

なるほど、妊娠でナーバスになった蜜葉さんが、
旦那さんとケンカして家出して、カズの家に訪れて、
ナーバスっぷりをぶちまけていた、ということらしい。

それを、俺が、事態を確かめず勝手に早とちりした、
ということになる。
さすがに恥ずかしくて情けなくなった。

真っ赤になった顔を隠すのに、手で鼻から下を覆う。
でも、カズにはそれを見抜かれてしまい、
これで誤解解けたよね、と言いたげに笑われて、
俺は黙ったままカズに目で謝った。

「でも、もう大丈夫だから」
蜜葉さんは可愛くガッツポーズをした。

「もうお母さんだもんね私。
 チーム奇数は解散だけど、頑張るから応援してね」
「応援するけど仲介役はもう勘弁してよね」

カズは苦笑いし、肩を竦めながら首を振った。
なるほど、名前の1と3でチーム奇数ってことか。

「ヒロ君もごめんね。
 先週、私のせいで帰っちゃったって聞いたから」
俺のことをカズから聞いたのだろう、
拝むように蜜葉さんが両手を合わせてきた。

「もうそれはいいですから」
拝まれて困っている俺を、カズは楽しそうに眺めている。
誤解していたことへの仕返しのつもりらしい。

「あの、俺てっきりカズの元上司かと思っちゃって‥」
つい口にして、しまったと思った。
カズが元上司とそういう関係でした、
というニュアンスを漂わせたようなものだ。

まずい、どうにかフォローしなければ、
と思いながら言葉を探していると、
蜜葉さんはきょとんとした表情をして、カズに訊ねた。

「え?元上司って、私も見たことあるあの男の人だよね?」

隣のカズは気まずそうに頷いた。

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