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  [ その雪景色窓辺より 35 ]
2010-10-10(Sun) 03:25:49
このモールにあるアパレルショップで、
蜜葉さんは店長代理として勤務している。
妊娠は順調みたいで現在は引継ぎをしており、
この日だったら少しだけなら逢えるから、
ということで、カズは俺をここに連れてきた。
そして、蜜葉さんは仕事へ戻って行った。

改めてカズの家族構成を聞いてみる。
「双葉のふうちゃんと、蜜葉のみっちゃんは、
 双子の29歳で、みっちゃんは去年結婚したんだ。
 ふうちゃんはマンガのアシスタントしてて、
 みっちゃんはアパレルショップの店長代理。
 次に僕、四葉、みんな年子だよ」

ちなみに、みっちゃんの旦那さんは婿入りしてるから、
とカズが付け加えた。
なるほど、それで苗字は青柳のままなのか。

それにしても元上司が男性だったとはな。
確かにカズは女だなんて言っていない。
所帯持ち、というのは男女どちらにも使用できる。

だけど、所帯持ちじゃなくて妻子持ちだって、
初めからそう言ってくれてれば、
こんなことにはならなかったんだ。
いや、そもそも初対面ならそこは普通伏せるか。

俺達は日常の会話に、何とも微妙な意味合いを含ませ、
互いのことを探っていた、ということになる。

俺はタバコを銜え、ジッポで火をつけてカズを見ると、
カズと目が合った、
思い上がりじゃなければもう同じ思いのはずだ。

改めてここで好きだって伝えようか。
そう思った時、モールに響くようなアナウンスが流れた。
噴水広場で、30分間だけイベントが開催されるらしい。

カズと窓の外を見ると、雪がさらさらと降ってきた。
もちろん人工雪だろうけど、照明の落とされた空間の雪は、
幻想的で、とてもキレイだった。
家族連れや恋人同士が、次第に噴水広場へ参集し、
わあ、と歓声を上げながら人工雪を楽しんでいた。

真夏に真冬の演出か、これもまた粋なもんだな、
と口を綻ばせるとカズが話し始めた。

「スノボに行った時、車の窓から見た雪みたい」
「うん」
「あの時はね、仕事も恋愛も、どっちもぐちゃぐちゃで、
 それを忘れたくてスノボに行ったら、タイヤがはまって、
 不運は続くんだなって車中で泣きそうだったよ」
「うん」
「その時ヒロに会えて、僕はすごく嬉しかった」

テーブルに乗っているカズの手に、俺は手を重ね、
そっと指を絡めた。
細くて長くて、優しい温度の指だった。

「俺もすごく嬉しかった」
「うん」
「スノボで会えたのも、それから再会できたのも、
 それから、ツーリングに行ったのも」
「うん」
「それなのに、蜜葉さんのこと誤解してごめん」

しばらく指を絡め合わせる。
指の温もりを直に感じながら、心臓の動きに呼吸を合わせ、
俺はようやく言った。

「カズ、好きだ」
「僕もヒロのことが好き」

やっと言えたのと、両思いだったことに安堵しながら。

俺達は、カフェの窓辺で雪景色を堪能したのだった。

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