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  [ 青い空を見上げて 18 ]
2010-06-07(Mon) 10:14:38
笹崎侑津弥


あまりの眩しさに、ゆっくり目を開けた。
カーテンの隙間からの朝日が、さんさんと顔を照らしている。
泣きすぎて腫れている目をごしごしと擦っていると、
一緒にいたはずのジョーがベッドにいないと気付いた。
同時に、何だかいい匂いが漂ってくる。

ベッドを降りて、いい匂いのするキッチンへ行くと、
何事もなかったかのような笑顔のジョーがいた。
「おっす、ウツミ」

すっかり洋服に着替えていて、
おまけにピンク色の腰エプロンをしている。
似合うと褒めていいのか悩むところだ。

「朝ごはん作ってるから、ウツミは顔洗ってこいよ」
「‥うん」

ジョーは料理が得意だったっけ。
いい匂いを嗅いで、ぐうと腹の虫が鳴いた。
笑われたけどジョーだから許せる。
美味そうなごはんに胸膨らませて、出てきたあくびを噛んだ。

ふと目がいった先には、11時を差す時計。
今日は金曜、平日は学校。
11時はいつもなら授業中のはずだ。

「‥う、わ!ジョー!学校!」
慌てて振り向くと、ジョーが箸を手ににやりとした。

「さっき結城に連絡したよ。
 笹崎侑津弥は、体調が悪いので今日は休みますって。
 まあ、結城も教頭も、昨日のあれを知ってるし了解したぜ。
 それとも、ウツミはそれでも学校行ってくるか?」

確かにその通りだ。
ジョーの言い分に俺は何も返せなかった。

昨日の今日で、さすがに授業に集中できない。
でも、学校のない平日に、何をすれば良いんだろう。
図書館にでも行って勉強か、公園のベンチで昼寝か、
それとも、家でテレビでも見るか。

俺はこれくらいしか思いつかなかったけど、
ジョーはそのどれでもなかった。

「朝ごはん食ったら、テーマパーク行こうぜ」
楽しそうに言うジョーは、テーブルに食事の準備をしていた。

「‥え?どうして?」
「どうしてって、だって暇じゃん」
「‥でも、学校いかないなら勉強したほうがいいんじゃ‥」

ジョーは、首を竦めるジェスチャーを俺に見せた。
「いいじゃん、たまには。息抜きも必要だって」

息抜きも必要、か。
ここしばらく息抜きというものをしてないと気付いた。
思い返せばずっと気が張っていて、緩んだことがほぼ無かった。
俺は、色々とギリギリ限界だったんだろう。

そうだな、と思って頷くと、ジョーも笑って頷いた。
「ほら、ぱぱっと顔洗ってこいって」
「‥うん」

俺は洗面所へ行き、顔を洗って鏡を見た。
まぶたの腫れは残ってるけど、かなり顔色はいい。
洋服に着替え、額の傷跡を見る。
髪でそれを隠してから、俺はそこを後にした。

ダイニングテーブルに、ジョー手製の和食が勢揃いしている。
焼き魚、漬物、のり、煮物、温かいごはんにみそ汁と、
日本の代表的な朝食に、ぽかんと口を開けた。

豪華だ。
それが第一印象だった。

「どうした?ほら、座って食おう」
ジョーが俺を促しながら、さっさとイスにかける。
俺は頷き、ジョーの向かいに座った。

こんな朝食久々だった。
いつもは食べないか、食べたとしてもパン1つくらいだ。
食べるのがもったいない気がするけど、
見ているだけではお腹はいっぱいにならない。

「‥い‥いただきます」
「おう。食え食え」
向かいのジョーに笑いかけて、手を合わせてから箸を手にした。

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