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  [ 傷痕は誰が為の 8 ]
2010-11-01(Mon) 05:30:48
身元引受人としてきたのは和賀塚高等学校の、
松田教頭だった。
スーツ姿ではなくポロシャツとチノパンを着ている。
松田教頭は硬い顔をして仲村君を立ち上がらせ、
無言のまま深々と一礼すると、
仲村君と共にゆっくりと会議室を出ていった。
どうやら、何かしらの手続きは済んでいる様子。

その直後に刑事1より、お帰り下さいと扉を開けられ、
僕達もすぐにそこから解放される。
駐車場で教頭と仲村君が、僕とヒロを待っていた。

「赤石さん、青柳さん、本当に申し訳ありません」
傍にいくや否や、教頭はさっきのように一礼した。
隣に立っている仲村君も頭を下げている。

「やめて下さい。こちらこそ申し訳ありません。
 俺が転んだせいで仲村君を巻き込んでしまいました」
「それは‥でも‥」
困惑した表情で、教頭は俯く仲村君を見た。

「警察にもちゃんと証言しましたから。
 これは事件ではなく、たまたま俺が転んでしまい、
 たまたまそこに仲村君がいただけだと。
 なあ、そうだよな?」
ヒロが話を振るも、無言のままの仲村君。

仲村君は俯いたまま目元を擦っていた。
たぶんちょっとだけ涙ぐんでいるのかもしれない。

「夜遅いですしもう解散しましょうか」
松田教頭は、笑顔のヒロの言葉に、
負けましたと言うように笑ってから、また頭を下げた。

それから、パト車を取り戻しに、
鑑識が終わっているであろう和賀高へ行く。
パト車と粉々の携帯を貰って、僕達は一度、
各車でセンターへと帰還した。

管制の人達は、笑顔でヒロを出迎えた。
黄島さんを含めた全員に、ヒロは何があったかを伝える。
もちろん、転んだという話で。

すると黄島さんが爆発した。
「バカだなヒロは。どうせこけるなら誰もいないところで、
 アート的にこけろよ」
「ノブさん見本みせてよ」
「こうだよ、こうやるんだよ」

見本はもはやアクロバティックの領域になっている。
他の管制の人は、笑いながら仕事に戻っていった。

途端、黄島さんの目つきが鋭くなった。
「マジでそれでいいんだな?」
「いい」

じっと見つめ合う2人。
目だけで確かめ合っている。

やがて、ヒロが手を叩いた。
「で、俺とカズのコースは誰がいってくれてんの?」
「別センターのバイトにヘルプ出したから、
 2人はとりあえず帰宅していいぞ」

驚いて僕は訊ねた。
「え?いいんですか?」
「ああ。青柳、ヒロの傍にいてやれ」
言って黄島さんも業務に戻った。

あれ、その発言はもしや。
僕達がそういう関係だって認識している、
ということじゃないだろうか。

刑事以上に、僕はヒロを睨んだ。
それを見たヒロが、ぶるっと体を震わす。

「ご‥ごめん‥」
「いいよ。あとでたっぷり言い訳を聞かせてもらうから。
 黄島さんの直令だもんね、ヒロの傍にいろってさ」

あはは、と僕は無表情で笑う。
ヒロは青ざめながら笑い、がっくりとした。

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